8月9日からのアンケートのまとめです。

「グァン」のような表記の発音について伺いました。
小さい「ア」「オ」を含む「グァン」「グォン」のような表記。発音できますか?
問題なく発音できる 79.2%
できると思うが難しい 15.4%
どう発音するか分からない 5.4%

「問題なく発音できる」という方が約8割と大多数を占めました。

国は1991年、「一般の社会生活において現代の国語を書き表すための『外来語の表記』のよりどころ」を決定し、その中で、外来語や外国の地名・人名を書き表すのに「一般的に用いる」第1表と、「原音や原つづりになるべく近く書き表そうとする場合に用いる」第2表を示しました。(→こちら

その第2表に「クァ、クィ、クェ、クォ、グァ」という表記が現れます(グォは載っていません)。つまり一般的な表記ではないけれども、元の外国語の音に近づけるために使ってもよい表記ということです。第2表には他に「イェ」「ヴァ、ヴィ、ヴェ、ヴォ」なども示されていますが、新聞は原則としてこれらの表記を避けるようにしています。「イェ」は「イエ」、「ヴァ」は「ワ、バ」などとします。

しかし第2表の書き方を全て排除しているわけではありません。例えば「ウィ、ウェ、ウォ」について、毎日新聞用語集では内閣告示以前から「ウィーン」「ウェリントン」「ウォール街」などと表記を決めていました。地名・人名以外の外来語についても2007年版で、原則は「ウイ、ウエ、ウオ」としながらも例外として「ウェブ」「ホームアンドアウェー」などが記載されました。13年版では「比較的新しい外国語で原音の意識が強いもの」(ハロウィーン、ウェブサイトなど)についてこの表記を使うとしており、許容範囲を拡大する傾向にあります。

1992年版用語集では内閣告示に触れ、第2表の表記についても「ほとんどは一般社会ですでに定着した」と記しています。その後25年以上たった現在のアンケートで、「グァン、グォン」を問題なく発音できる方が多数派なのも当然でしょう。これらの表記をまだ例外としている新聞はかなり保守的かもしれません。

旧仮名遣いでは、拗音(ようおん)や促音も大きな文字で書かれていました。声に出す際には、読者は意味から発音を判断しなければなりません。

「死にたがつていらつしやるのですつてね」
「ええ。――いえ、死にたがつてゐるよりも生きることに飽きてゐるのです」
彼等はかう云ふ問答から一しよに死ぬことを約束した。
芥川龍之介「或阿呆の一生」 岩波書店「芥川龍之介全集16」から

それが今や逆に、「ぉはょぅ」「かゎぃぃ」「ゅぅぅっゃゎー」など、本来大きい文字で書くところでわざわざ小さい文字を使ったものがネット上の(おそらく若い世代の)SNS投稿ではたくさん見つかります。さすがに新聞がこうした表記まで許容することはあり得ないでしょうが、小さな文字の表記を柔軟に受け入れる世代は今後も増えていくでしょう。「グァン、グォン」程度で不安を感じている場合ではないのかもしれません。


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