7月23日からのアンケートのまとめです。

厳しい暑さを表す言葉について伺いました。
とにかく暑い日が続きますが……一番暑そうなのはどの言葉ですか?
酷暑 33.7%
炎暑 31.8%
極暑 25.6%
激暑 8.9%

例年になく暑い日が続くなかでも、特に心配されるのは、今後はこの暑さが特別なものではなくなるのではないかということでしょう。最高気温40度以上の日が各地で繰り返されるようになったとき、きちんと暑さを表現し、危険さを印象づけるような言葉はあるでしょうか。

アンケートで最多を占めた「一番暑そうな言葉」は、この夏よく見かける「酷暑」。続いて「炎暑」で、比較的目にすることが少ない「極暑」も健闘。「激暑」はあまり支持(?)を得られませんでした。

実際のところ、「激暑」は使用例があまりありません。毎日新聞用語集には「はげしい」という意味の「劇」と「激」の使い分け例の中で、「劇薬」「激震」などとともに「激暑」も挙げられてはいるのですが、1987年以来の使用例は6件(東京本紙。地方版除く)と僅かです。角川俳句大歳時記には「極暑」「炎暑」の項目があり、「酷暑」も「極暑」の項に含まれているのですが、「激暑」は見当たりませんでした。


一番暑そうとされた「酷暑」。大辞林3版には「酷暑日」の項目があります。書籍版よりも記述が新しいYahoo!辞書から引くと「俗に、最高気温が 35℃以上の日。〔1990 年代初め頃からマスコミなどが用いた表現。気象庁は 2007 年(平成 19)4 月以降、猛暑日を正式な予報用語とした〕」とあります。毎日新聞でもかつては使用したこともありましたが、今は気象庁に従って「猛暑日」を使います。

毎日新聞本紙では2010年に、読者の質問を受け付ける「質問なるほドリ」の欄で「猛暑日って、なぜ設けられたの?」という話題が取り上げられました。それによると、最高気温35度以上の日は「酷暑日」にしてほしい、と気象庁に訴える報道機関もあったそうですが、「『酷』は『残酷』や『過酷』など人体へのダメージや被害のイメージにつながるため気象用語としてはふさわしくないと判断されました」とのこと。

しかし、今年の暑さは「命に危険を及ぼすレベルで、災害と認識している」(気象庁の予報官)と言われる、まさに「残酷」「過酷」と言うべきもので、改めて「酷暑日」が必要かと感じるほど。今回のアンケートで「酷暑」が票を集めたのも、むべなるかなと思われます。

「炎暑」は「文字通り、真夏の燃えるような暑さをいう。(中略)『炎』の一字によって、ぎらぎらと照りつける、太陽の燦爛(さんらん)としたまぶしい光そのものが、背景に据わっている」(角川俳句大歳時記)。単に暑いというだけでなく、日差しの強さを示唆する言葉です。

「極暑」は「七月末から八月上旬にかけての最も厳しい暑さをいう。暑さの『極み』となって夏が頂点に達し、この先の生命の衰弱と衰退の匂いを漂わせるようにもとれる」(同)。「月青くかゝる極暑の夜の町」(高浜虚子)。月はさえざえと青く輝くとも、下界はうだるような暑さだ――というのもやり切れない情景ですが、「極暑」はこのように日差しがない場面でも使える語です。

日本国語大辞典(2版)には、「酷暑」は14世紀、「炎暑」は11世紀、「極暑」は15世紀の用例が載っています。なるほど日本は昔から暑かったのだなあ、と感心すると同時に、今後は一層の暑さと付き合わねばならないのかと思うと、先行きが不安になります。せめて暑さを表現する言葉ぐらいは、柔軟に扱えるようになりたいものです。




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