5月31日からのアンケートのまとめです。

「すすめる」という言葉の使い分けについて伺いました。
健康のためには運動が大事だよ、と人に伝える――どう書きますか?
運動を薦める 16.2%
運動を勧める 69.1%
運動をすすめる 14.7%

「勧める」を選んだ人が7割。回答から見られる解説では、当方が「正解」と考えるのも「勧める」だと書きましたが、考え方にずれがなかったことに安心しました。基本的には、行為を表す名詞については「勧める」を、物品や人物などには「薦める」を使うのがよいと考えられます。

文化庁の「言葉に関する問答集6」(1980年)や白川静氏の字書「字統」によると、常用漢字の「勧」の正字である「勸」の元の意味は「口々にやかましく言って力づけること」ないし「農事をすすめること」などとされます。そこから「はげます」「よいことをするようにしむける」といった勧誘・勧奨の意味で使われるようになったとのこと。

「薦」は「廌(チ、タイ)」という一本角の神獣が食べるきちんとそろった草のこと、あるいは草を敷いた上に供物の獣をのせて神にすすめること、といいます。

文字としての成り立ちは全く別ものですが、どちらも日本語では「すすめる」と訓読みするにふさわしい意味を含んでいます。文化庁の「『同訓異字』の漢字の使い分け例」では、「そうするように働きかける」という意味では「勧める」、「推薦する」という意味では「薦める」だとしています。

「問答集」で挙げている用例には「食事(たばこ・座ぶとん)を勧める」というものがありました。「食事をすすめる」は大体において「食事すること」をすすめるという意味ですから、動作を含むケースであって「勧める」になるのは分かりやすいと思います。しかし、「座ぶとんする」とは言わないですが……この場合も「座ぶとんに座ること」をすすめている、というのは明らかだということでしょう。


これが例えば、「床に置くべきものはクッションか、座ぶとんか、座椅子か」が問題になっている場合に「座ぶとんを推す」ということであれば、「座ぶとんを薦める」になろうかと思いますが、まあレアケースですね。

使い分けで困るのは、一つの記事の中でも「薦める」「勧める」が入り交じる場合です。「読書を勧める」記事の中で、書名を挙げて「『○○』を薦める」とあると、表記が揺れているように見えてしまいます。そうしたケースでも使い分け自体には根拠があるわけですが、「すすめる」と仮名書きにして統一感の無さを解消する、という方法はあり得ると考えます。


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