先週に引き続き、平昌五輪に関連した校閲の作業で気になった言葉について取り上げます。


平昌五輪ではLS北見の女子代表が初めて銅メダルを獲得し、カーリングが大きな話題となりました。そんなカーリング女子を取り上げた記事でこんな表現が。


「チームワークが重視されるカーリングは、他の球技のように優秀な選手を選抜して代表を構成するのではなく、チーム単位で争って代表を決める」

なるほどカーリングは、例えばバレーボールやサッカーのように所属チームの枠を超えて「オールスター」で代表を構成するのではなく、チーム単位で出場選手が決まる珍しいスポーツなのだなあと思いながら読んでいたのですが、「他の球技のように」という部分でペンが止まりました。

この書き方だと、カーリングもバレーボールやサッカーのように「球技」となるわけですが、果たしてカーリングは球技と言えるのでしょうか。

確かに「丸い」ストーンを「投げ」てはいますが……。とりあえず出稿部と相談して「他の団体競技のように」と直したのですが、気になったのでカーリングは球技なのか調べてみました。

まず、「カーリング」を辞書で引いてみると
氷上スポーツの一つ。『氷上のチェス』と呼ばれる。四人一組の二チームでハンドルのついた重いストーン(石)を投げて滑らせ、円内に入れて得点を競う
広辞苑7版
氷の上で、円盤の形をした石(=ストーン)を滑らせて、円の中に入れることをきそう団体競技
三省堂国語辞典7版
とあり、球技かどうかには触れられていません。


次に「球技」を引いてみると
ボールを用いて行う競技。野球・テニス・サッカー・ゴルフ・卓球・ホッケーの類
広辞苑7版
ボールを使って行なう競技の総称。野球、テニス、ラグビー、サッカー、アメリカンフットボール、バレーボール、バスケットボール、ハンドボール、ゴルフ、卓球、ホッケー、クリケット、クロッケーなど
日本国語大辞典2版
とあり、具体例としてカーリングは挙げられていません。カーリングは「ボール=ゴムまたは革などで作ったまり。球。また、球状のもの(広辞苑7版)」ではなく「ストーン」を使った競技なので、定義上は球技とはいえなそうです。


カーリングからの類推で、球技かどうか紛らわしいものの例としては、ボウリングとアイスホッケーが挙げられるでしょう。

ボウリングは投げる(転がす)動作がカーリングと似ていますが、投げているのが「球」なので球技となります。


アイスホッケーは用いられるパックが球体ではなく、球技ではなさそうですが、パックが球でないのは氷の上を滑りやすいように改良されたためで、昔はフィールドホッケーのようにボールを使っていたとされます。

そもそもホッケーが球技であることを考えると、アイスホッケーも球技に含めるのが自然な気がします。


日本カーリング協会のホームページを見ると、「凍りついた池で、子供たちが石をすべらせて遊んでいるところを見た大人たちが興味を持ち、スポーツとして発展させていきました」という記述があります。

カーリングはその起源からボールではなくストーンを使っていたらしく、そこが上記の競技とは違い球技とはされない一つの理由かもしれません。

全般的な言葉の使われ方を見ると、「団体競技」とした直しは適切だったと思います。
【佐原慶】



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