先日、職場で同僚から「料理の原稿で『ほほ肉』が出てきたんだけど、『ほお肉』と直すべきだろうか」と聞かれることがありました。


日ごろの新聞校閲の仕事では、「ほほ」が出てくると、「ほお」に直すことがよくあります。

国語辞典では「ほほ」を引くと大抵「→ほお」(「ほお」を参照せよ)とし、「ほお」を主、「ほほ」を従としています。


「ほお」の項を見ると、旧仮名遣いの表記としては「ほほ」になることが分かります。また、ほほを「『ほお』の新しい言い方」(新明解国語辞典・第7版)とする辞典や、「ほお (現在は『ほほ』とも)」(日本国語大辞典・第2版)とする辞典もあります。


常用漢字表でも2010年に追加された「頰」の読みとしては「ほお」を挙げ、「『頰』は,『ほほ』とも」と注記しています。

常用漢字表より

これらから、現状では「ほほ」も誤りではないが、表記を統一するなら「ほお」がどちらかといえば適切であると考えて「ほお」にすることが多いのです。というわけで最初の同僚の質問が出てきたわけですが、何かひっかかるものを感じました。

そこで、料理の「ほお肉・ほほ肉」がどのように表記されているか調べてみました。食材や料理関連の事典をみてみると、いずれの表記をとる事典もありました。


次に、インターネットで調べてみました。グーグルで「ほほ肉」約119万件、「ほお肉」6390件。各店のメニューなどを検索できる飲食店紹介サイトでも、「ほほ肉」ばかりで「ほお肉」はごく僅かでした。

「ぐるなび」で「ほほ肉」975件、「ほお肉」3件。「食べログ」で「ほほ肉」1万1630件、「ほお肉」98件。レシピサイトでも同様で、「クックパッド」で「ほほ肉」160件、「ほお肉」1件。(いずれも1月5日検索)。飲食店のメニューなどでは「ほほ肉」が圧倒的に多いことが分かります。

私の感覚としては、「ほお」の方が温かみのある感じがして、例えば幼児のほっぺについていうときには使いたいですが、食材には使うのを避けたい気持ちがあります。

結局冒頭の原稿は「頰肉」としましたが、一般の使用実態になぜこのようにはっきりした傾向が出ているのかは、残念ながら分からないままです。事情をご存じの方がいらしたらぜひ教えていただきたいものです。
【田村剛】



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