最近、「校閲」がさまざまな場でとりあげられ、校閲記者の志望者数も増えているという話を聞きます。そんななかこの仕事を始めた1年目の校閲記者はどんなことを感じているのでしょうか。3年目の先輩、横山康博記者が、今年の春に入社した山田優梨記者に聞きました。


新聞校閲を選んだ理由は


――なぜ新聞社の校閲記者を志望したのですか。

◇文字を読むのが好きだったからです。最初は出版社とか印刷会社を受けていたんですけど……。出版社で新聞にも校閲があると聞いて。新聞がいいかなと。

私は大学では小説を書いたり読んだりすることを専門にしていたのですが、日本語って曖昧だったりするじゃないですか。自由で。それが好きだなあと思っていて。だから小説とかのほうが自由度が高くて好きだなとは思うんですけど。

一方で、そういう日本語をきちんと維持し伝えていくためには、報道の言葉のような、きちんとした決まりのある言葉遣いがとても重要なものだと感じるんです。自分の仕事としてはそちらのほうがいいかなと思いました。


――入社して約半年がたちましたが、その文字や言葉に対する思いに変化はありましたか。たとえばこれは苦手だなとか、新聞特有の言い回し、さきほど言っていた「報道の言葉」などに苦労することなどはありますか。

◇このあいだ結局、紙面化はされなかったのですがスポーツ面で、プロ野球で広島のバティスタ選手が打ったという記事の見出しで「バティス打」というのがあったんですがまるで意味がわからなくて。だじゃれとか気の利いた言い回しとかは私はまったく理解できないんだというのがわかりました(笑い)。

もともとあまりスポーツに詳しくないこともあって。最初に見たときにあ!タが抜けてると思って。違ったんだ、そういうんじゃないだ。しゃれなんだって。そんなこともあって、あまりスポーツ面は得意ではないですね。

「ラテ禁」の「ラテ」って…


――この仕事は日々担当する面が変わりますが、逆に好きな面などありますか。

三面が好きですね。「なるほドリ」があるので……。

(編注:「なるほドリ」はニュースの背景や疑問をやさしく解説するコーナー「質問なるほドリ」のキャラクター。プロフィル等はこちら

――キャラクターがですか。内容ですか。

◇キャラクターもですが(笑い)。時々、なるほドリがすごく鋭いことを言っているのがおもしろくて。聞く側なのに妙に詳しくて。そこがシュールで好きです。

――なるほド。夕方からの勤務が多いですが、夜型生活にはなれましたか。

◇なれるしかないので……。休みの日はだらっとしちゃうことが多いですね。友達からの誘いとかを断ることもあって悲しい気持ちになります。 

――すこしずつなれてきたということですが、職場のなかでわからないことやわからない言葉とかはありますか。


◇「ラテ禁」がいまだにわからなくて……。どういう意味なんですか?

――独自ネタや解禁時間がある発表ものなどの場合に、特定の時間までネット等に出さないという意味です。昔はネットがなかったのでラジオ・テレビということだったらしいです。

◇「ラテ欄」(新聞のラジオ・テレビ番組欄)のラテですか。

――そうです。僕は牛乳のラテかなと思っていましたがそうでないことは確認済みです(笑い)。

◇私もちょっと、そのラテかな?と思ってました。でも、それだと意味がわからないなあと……。なるほド! 勉強になりました。

「やってしまった」のは?


――仕事をしてみて想像していたこととの違いや驚いたことなどはありますか。

◇予想以上に時間に追われていてバタバタなことは驚きました。大刷り(新聞紙面大のゲラ)がきたばっかりなのに「降ろします」っていわれることも結構あって。

最近なんか自分から小さい声が漏れていることに気がつきました。なんかブツブツ言っているんですよ。えっ!?とか言ってて。

――それはひとりごと? それとも記事の内容を確かめているんですか?

◇読みながら確かめていることもありますし、心の声が……。(笑い)


――じゃあ仕事をしてきて日常生活で変わったなと思うことはありますか。

◇なんか校閲の方って、入社する前から誤字・脱字を見つける癖があってと言っている人もいますよね。私はいままで全然気づかなかったんですけど。

最近読んだ本で「きよし」っていう登場人物の字がそれまで清志だったのが清になっていて、気づけるようになったのは仕事のお陰かと。

――なるほど。では逆に、いままでこれはやっちゃったなあという失敗はありますか。

◇訂正記事の面数が違って訂正の訂正が載ってしまったことですね。ちょっと調べればわかったことなのにと。やってしまったなと。

――悔やんでしまうところですよね。ではうまくいったな、とおもったことはありましたか。

◇直したわけではないんですけどある記事である韓国の新聞の一面の見出しに○○○と書いてあってという記事を校閲したときに最初は確認できないかなと思っていたんですけど根気よく調べているうちにお試し版みたいな無料でみられるビューアーみたいなやつにたどり着いて。その見出しがあっていることを確認できたことがよかったです。

――普通直せたことを言いがちですけど、確認できたことを挙げるのはかっこいいですね。1年目の自分に聞かせてやりたいくらいです。いい話すぎてカットしたいくらいです。

◇せっかく話したのに……。ぜひ使ってください(笑い)。


――先輩に言われて印象に残っている言葉はありますか。

◇技術的なことでいうと「ためらい傷」ですかね。

――ためらい傷?

◇デスクやキャップに再校してもらうときにちょっと自分ではひっかかるなとおもうことや言葉の言い回しに赤で線をひけと。そうするといい案をだしてくれたり、ここはこう思うとか説明してくれたりすると。それをためらい傷とよんでいます。

――なかなかいいネーミングですね。精神的なこともありますか。

◇入社してすぐ仕事の仕方を指導してくれた先生役の先輩が、校閲することを「原稿をきれいにする」と言っているのがかっこいいなと思いました。


――では最後に今後の目標を聞かせてください。

◇ほんとうにちゃんと読めるようになりたいです。一文字、一文字ちゃんと読めるようになりたいです。それだけです。

――ちょっと耳が痛いです(笑い)。ありがとうございました。

【まとめ・横山康博】


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