東日本は8月は雨続きだったため、7月から8月にかけて各地で取水制限があったことなど記憶のかなた、なのですが、7月には中部地方向けにも渇水への注意を告げる原稿が出ました。

「○○ダムでは小雨が続けば9月中に枯渇する可能性があることも……」

ん? 小雨だろうと雨が続けば水不足ということはなさそうです。ここは「少雨が続けば」とすべきところ。「小雨」と「少雨」、どちらも「しょうう」と読みますが、

【小雨】 少し降る雨。こさめ。
【少雨】 一定期間内に雨の降る量が少ないこと。
「広辞苑」第6版

と、はっきり異なる意味を持つ言葉です。「小雨」の方はもっぱら「こさめ」と読みますから、日常的には間違えることはないと思いますが、ワープロ入力の誤変換はものの弾みで起こりそうです。

「小」と「少」は、それぞれ「ちいさい」「すくない」という言葉に対応していますが、その線引きは意外に曖昧で、ちょっとしたことから入れ替わりも生じます。


今年も8月には先の大戦の話題が紙面をにぎわしましたが、「小国民」という字句が原稿に出ることも。ああ、1940年代には小学校でなく国民学校というものがあったし、小さい国民ね、分かります――と考えると、誤りの見逃しにつながります。小学生の代わりに使われた「しょうこくみん」は、普通「少国民」と書きます。この場合の「少」は、少年少女などと同様、年が若い、年少であるという意味です。「小国民」では「小さい国」の国民とも読めますから、戦時下にはそのような表記は好まれなかっただろうとも想像されます。

あるいは野球などの記事に出てくる「最小失点」はどうでしょう。最小単位の失点、とすれば間違いとは言い切れませんが、最も少ない失点というなら「最少失点」とするところでしょう。毎日新聞でも「最少」を採用しています。ある日の原稿では「最小限の失点」とあった字句を手直しする際に、「限の」という2文字を削る処理を施したため、「最小失点」が出現することになってしまいました。ちなみに「最小限」は「最大限」の対語と考えられるので、「小」を使うのが普通です。

毎日新聞用語集より

ほかにも「過小評価」と「過少資本」、「少額出資」と「小額紙幣」のような紛らわしい例が毎日新聞用語集には挙げられています。小さな違いなら少しくらい見逃しても、などというわけにはいきません。少しでも間違いを減らすため、小さな違いにも目をこらしたいところです。
【大竹史也】


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