「海の伝説」がテーマの〈読めますか?〉の結果は「補陀落渡海」(正解率46%)など。「補」をここでは「ふ」と読みますが、元は梵語のpotalakaで、音写したものだから。日本語ではなかったのです。
〈読めますか?〉結果

この週は「海の伝説」でした。


正解
常世とこよ 85%
じょうよ 9%
つねよ 6%
海に囲まれた日本では、伝説も限りなくあるのですが、中でも最も有名なのは浦島太郎でしょう。「万葉集」では長歌で浦島伝説をうたっていて「常世」も出てきます。
水江(みづのえ)の 浦の島子が 鰹(かつを)釣り 鯛(たひ)釣り誇り 七日まで 家にも来ずて 海坂(うなさか)を 過ぎて漕(こ)ぎ行くに わたつみの 神の娘子(をとめ)に たまさかに い漕(こ)ぎ向かひ 相(あひ)あとらひ 言(こと)成りしかば かき結び 常世に至り わたつみの 神の宮の 内の重(へ)の 妙(たへ)なる殿に 携はり……
(岩波文庫より)
ここには亀が出てきません。岩波文庫の注釈では「日本書紀にも釈日本紀にも亀が出てくるが、この長歌には亀はまったく見えない。知識人と思われる作者がそのことを怪奇として、遺却したものであろうか」とあります。万葉集の「常世」は日本書紀では「蓬莱山(とこよのくに)」と書かれています。


正解
補陀落渡海ふだらくとかい 46%
ほだらとかい 46%
ほうらいとかい 8%
「補陀落渡海」は「ふだらくとかい」「ほだらとかい」が同率となりました。なぜ「補」を「ふ」と読むのか。実は「普陀落」という表記もあり、梵語のpotalakaの音写なので元は日本語ではなかったのです。補陀落とは「インド南端の海岸にある、八角形で観音が住むという山」(大辞林)ですが、そこへ「渡海」するのは自殺にほかなりません。しかし海のかなたのどこかにユートピアがあるという観念は人をとらえて離しません。

文学でも井上靖「補陀落渡海記」(講談社文芸文庫)、中上健次「補陀落」(河出文庫「十九歳の地図」所収)など、作家の想像力をかきたててきました。ツイッターでは「隆慶一郎先生の『死ぬことと見つけたり』、桑原水菜先生の『炎の蜃気楼(ミラージュ)』でも出てくる」という報告をいただきました。


正解
女護の島にょごのしま 47%
めごのしま 49%
じょごのしま 4%
これらの小説で扱われる「補陀落渡海」に対し、「女護の島」はなぜか江戸時代の作品によく見られます。井原西鶴「好色一代男」、滝沢馬琴「椿説(ちんせつ)弓張月」、そして「女ばかりの島」の意味ではありませんが近松門左衛門「平家女護島」。

しかし現代ではちょっと使われた例を知りません。男の視線で描かれる女護の島は女性が社会に進出した世の中にはふさわしくないのでしょうか。逆に、無人島を舞台に女性が1人だけで男性ばかりという逆ハーレム状態が描かれた「東京島」(桐野夏生著、新潮文庫)が話題になったりします。

ところで、沖ノ島の世界遺産登録のNHKニュースで、「にょにんきんせい」は「にょにんきんぜい」の誤りでした、と訂正が入ったとのこと。辞書では「にょにんきんせい」ともなどと併記していて、「せ」も誤りと言い難いのですが、訂正するような事情があったのでしょうか。気になります。


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