「将棋」がテーマの〈読めますか?〉の結果は「香車」(80%)など全体的に高くなりました。ところで藤井四段の「揮毫」の扇子が人気ですが、書を印刷したものを「揮毫」と呼ぶことに違和感はありませんか?
〈読めますか?〉結果

この週は「将棋」。これまでもテーマにしたことがありますが、藤井聡太四段の大活躍がこのテーマを呼び戻しました。


正解
香車きょうしゃ 80%
かしゃ 15%
こうす 5%
正解率は最低でも「香車」80%と高くなりました。将棋ブームで覚えたというよりは、将棋を全く知らない人でも3択で正解できたという人が多かったのではないでしょうか。「香車」の場合、「こうしゃ」と読む別語があるので誤りの選択肢にできなかったという事情があります。

ただ、そればかりではなく「香」を「きょう」と読む人名があることも当たりやすくしたかもしれません。最近映画化もされた将棋の漫画「3月のライオン」では「幸田香子」という人物が出てきますし(映画では有村架純さん)、ちょっと年配なら1996年度のNHK連続テレビ小説「ふたりっ子」の主人公の一人「野田香子」を思い出す人も多いでしょう。


正解
定跡じょうせき 84%
ていせき 12%
じょうし 4%
「定跡」は「香車」と違い、間違いの率はそのまま定跡という言葉を知らない人の率と考えてよいと思います。正解率は良いのですが、必ずしも常識とはいえない結果となりました。校閲としては囲碁の「定石」との使い分けに気を付けなければいけない語です。

「定跡」は恐らく「定石」が転じて日本で将棋用にできた言葉と思われますが、音が同じなので変換ミスの危険はつきまといます。毎日新聞の場合、それぞれの専門記者が書くので混同の例はあまりないのですが、一般語として「最善の選択」の意味で使う場合に迷う場面はありそうです。新聞では、囲碁の方の「定石」で統一しています。


正解
四間飛車しけんびしゃ 82%
よんかんびしゃ 13%
しかんじしゃ 5%
「四間飛車」の「間」はここでは「碁盤や将棋盤などの線と線の間を数える語」(新潮日本語漢字辞典)。この語を選んだのは、四間飛車というのは将棋記事の見出しに取られることが多いという理由もありますが、「藤井システム」という、藤井猛九段の編み出した四間飛車を使う戦法も、藤井四段とのつながりで意識しました。

漫画「3月のライオン」では主人公のライバル(? モデルは故・村山聖九段とか)が「憧れなんだよ!! 『二階堂ワクチン』とか『二階堂システム』とか名前の入った技を後世に残すのが!!」と言うシーンがあります。「藤井システム」の他にも「森下システム」とか「木村定跡」とかありますが、名前を戦法に残す棋士はあまり多くはないようです。もし将来、藤井四段が新たな戦法を考案したとしたらどういう名前が付けられるのでしょうか。


ところで、毎日新聞の次の文章に読者からクレームが来ました。
人気は高まる一方で、自ら揮毫(きごう)した扇子、ファイルといった公式グッズは 飛ぶように売れ
この読者は「揮毫とは手書きのものを指すが、この扇子の場合は印刷物。揮毫と称して印刷物を売るのは詐欺だ」と主張しています。

確かに「揮毫」は「筆をふるう」ことですから、文字通りに解釈すると手書きそのものと思わせる余地はあります。オンラインショップの中にはわざわざ「※こちらのコーナーで取り扱っている扇子はいずれも揮毫は印刷されたものです。※直筆扇子は、直筆モノコーナーで販売致しております」と直筆との違いを明示したものもあります。

ただ「揮毫した扇子」を広く販売するという場合、揮毫文字を複製したものというのは一般的な認識ではないかという気もします。そうではなく肉筆ならそれこそ「直筆」と書きそうなものですから。しかし例えば「藤井四段が白鵬関に自ら揮毫した扇子を贈った」というニュースの場合、どちらなんだろうと気になります。

皆さんはどう思われますか? 書を印刷した扇子を「揮毫の扇子」と呼ぶことに違和感がありますか?

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