「はがき」がテーマの〈読めますか?〉の結果は「不一」(正解率75%)など。今回は全体的に正解率が高めでした。さて今月13日と19日は太宰治ゆかりの日。テーマにそった太宰作品を多数紹介しました。この機会に読み直してみませんか。
〈読めますか?〉結果

この週は「はがき」がテーマ。6月1日の62円への値上げに合わせたものです。


はがきといえば、「官製はがき」という表記は郵政民営化以来、不適切になったので「郵便はがき」などに何度直したことでしょう。私製はがきと区別するためにそう書いているのかもしれませんが、もしそうなら「私製はがき不可」と記せば済むことです。

一般的には間違いとはいえませんが「葉書」も毎日新聞では使わず「はがき」と仮名書きにしています。「はがき」には「端書」という漢字も当てられ、どうやらこちらが本来の用字のようですが、「はしがき」とも読めるこの表記に統一するわけにもいかず、「はがき」としているのです。


正解
郵袋ゆうたい 94%
ゆうぶくろ 4%
ゆうふくろ 2%
さて、「郵袋」について、「袋」はふつう訓読みで使うし、専門用語ともいえるので読みに迷うのではないかと予想していましたが、見事に外れました。


正解
はがき「1葉」いちよう 77%
ひとは 12%
いちまい 11%
「1葉」はこれだけだと「ひとは」とも読める、少なくともそう思われる可能性があるため「はがき『1葉』」という形で出題しました。「ひとは」は「一つの葉」という意味で、オー・ヘンリーの短編の邦題として「最後のひと葉」(岩波少年文庫)が知られます。ただし「最後の一葉」を「いちよう」と読んでもかまいません。

「数え方の辞典」(飯田朝子著、小学館)には「は【葉】」の数え方として「枚、葉(よう)、葉(は)、つ」が掲げられ「『最後の一葉(いちよう、ひとは)』のように『葉(よう)』『葉(は)』で数えることもあります」とあります。

しかし「はがき」の数え方のところを引くと「枚、通、葉(よう)」となり「葉(は)」はありません。同書のコラムにはこうあります。
「葉」は木の葉のように小さなものだけを数えます。また、「葉」で数えられるものは、手にとって眺めていたいような、本人にとって思い入れのあるもの、ノスタルジックな感情をそそられるものが多いようです。
「葉(よう)」は太宰治「人間失格」の冒頭とラストに使われています。「私は、その男の写真を三葉、見たことがある」「三葉の写真、その奇怪さに就(つ)いては、はしがきにも書いて置いた」。出題者は長い間、これが読めず「さんよう」「さんまい」「みつは」の間で勝手に揺れていました。そういえば「君の名は。」のヒロインの名は「三葉(みつは)」でしたね。一方「人間失格」の主人公は「葉蔵」です。

「人間失格」のラストの舞台は千葉県船橋市。この船橋という地名は、「虚構の春」(新潮文庫「二十世紀旗手」所収)という小説でも出てきます。太宰治あてに届いたさまざまな人からのはがき、手紙をただ並べるという斬新な構成。太宰の分身のような読者の長文もあり、どこまで太宰自身の創作かわからない虚実ないまぜの面白さがたまりません。「船橋」が出てくるのは「拝啓」から始まる短い手紙で、「不一」で終わります。


正解
不一ふいつ 75%
ふいち 13%
ふひと 11%
「不一」は「ろまん灯籠」(新潮文庫)所収の「恥」「新郎」の中の手紙にも出てきて、いずれも「拝復」で始まります。「不一」出題時の解説には「『草々』などと同じく、冒頭の『前略』を受ける」と書き、手紙の書き方マニュアルのたぐいにもそうあるのですが、「拝啓」「拝復」を受けるのは「敬具」に決まっていて「不一」はありえない、というわけではないようです。

さて6月13日は太宰治入水自殺、19日はその遺体が発見された日であるとともに生誕の日でもあります。以前はまって卒業した人も、この機会に読み直してみませんか。

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