「人名由来?の言葉」がテーマの〈読めますか?〉の結果は「治部煮」(正解率79%)など。治部煮の由来はさまざまありますが、筆者が可能性があると思うのは「鴨皮をじぶじぶ音を立てて煮るから」という説。本当にそんな音が聞こえたのです。
〈読めますか?〉結果

この週は「人名由来?の言葉」というテーマでした。「?」を付けたのは、語源というのは諸説あるものが多く断定できないからです。


正解
治部煮じぶに 79%
おさかべに 13%
ちべに 8%
「治部煮」は諸説あるものの代表例。「世界の食 語源×由来小事典」(ジャパンアート社)には七つも由来説が挙げられています。
①鴨の皮を鍋の中でじぶじぶ音を立てて煮るからという説
②豊臣秀吉の文禄の役に、兵糧奉行として従軍した岡部治部右衛門が、朝鮮から伝えた陣中料理という説
③豊臣秀吉のために石田三成が考案した料理で、後に三成が治部少輔に任官したときに、昔の料理を思い出して治部煮とつけたという説
④長野県下高井郡渋温泉付近の郷土料理からつけられたという説
⑤金沢に、昔ジープというロシア人が漂着して作ったという説
⑥金沢城の完成を祝う宴席の料理に賄方(まかないかた)の侍が作って供したのが始まりでその侍の名前からきているという説
⑦新潟の漁師の名
③で思い出されるのが昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」です。石田三成は豊臣秀吉から「治部」と呼ばれていました。

個人的に一番可能性がありそうと思うのが①です。カモ肉ではなく鶏肉での代用ですが、自分で治部煮もどきを作ったら確かに「じぶじぶ」と聞こえたからです。もっとも①だとしてもどうして治部の字を当てたかという問題は残るのですが。


正解
定家葛ていかかずら 69%
ていかくず 28%
ていかかつ 3%
「定家葛」は人名由来ということが割合はっきりしています。ただし、謡曲「定家」では藤原定家の式子内親王に対する執心が「葛」になったというものの、2人が恋愛関係にあったという確かな記録はないようです。

「人名ではない人名録」(小林祥次郎著、勉誠出版)によると、「定家が内親王に恋の歌を送ったが、定家が醜いので返歌をやらなかった」という後年の記述があるとのこと。一方的な、もしかしたらストーカー的な執着があったとしたら、女性の墓にまでからみつくというのは、見立てとしても女性から見たら気持ち悪さの極みでしょうね。

ところで「葛」は「葛城」という地名などの場合「かつら」と読みます。この「つ」が定家葛では「かずら」という表記になるように、「つ」「づ」「ず」の仮名遣いはやっかいです。


正解
河津掛けかわずがけ 59%
こうずがけ 29%
かわつがけ 12%
「河津掛け」は「日本国語大辞典」によると「河津祐泰がこの手で俣野の五郎景久に勝ったところからこの名があるというが、後世の俗説か」。別の説は「かわず」つまりカエルから。ここで問題なのは、どちらの説を取るかによっては平仮名表記が「づ」と「ず」で分かれることです。単純にいえば、河津祐泰説を取るなら「かわづ」、カエル説を取るなら「かわず」ということになります。

河津祐泰といっても聞いたことがない人は多いでしょうが、曽我兄弟の親といえばどうでしょう。それでも若い人は知らないかもしれませんが、あだ討ちといえば、赤穂義士の次に有名なのが曽我兄弟。その親の河津祐泰の敵を息子たちが討ったのが旧暦5月28日。雨だったことから、その日の雨のことをいう「曽我の雨」という言葉までできました。

このように有名な事件ですから、曽我兄弟の親も言葉の由来になるというのはありそうなことですが、有名な話というのは尾ひれがつきがち。だからこそ面白い語源説というのは眉に唾をつけてかからなければなりません。日本国語大辞典で「後世の俗説か」としているところからは、やはり確かな語源ではないと思わせます。毎日新聞では「かわず掛け」と表記することに決めています。

なお、これは相撲では珍しい決まり手であり、今回の出題への反応からは、むしろジャイアント馬場がプロレスに持ち込んだ技「河津落とし」ということで知っている人が多いことがうかがえます。ジャイアント馬場ともなると「かわず」というイメージにそぐわないかもしれません。


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