「夫婦」がテーマの〈読めますか?〉で正解率最低は「比目の枕」(43%)。「夫君」(67%)は会話では使いにくいですが、では他人の夫をどう呼ぶか。「ご主人」「だんなさん」は抵抗を感じる女性が増え、「パートナー」も目上にはちょっと…
〈読めますか?〉結果

この週は11月22日の「いい夫婦の日」に合わせ「夫婦」をテ―マにしました。
正解
比目の枕ひもくのまくら 43%
ひめのまくら 40%
ひらめのまくら 16%
最も正解率が低かったのは「比目の枕」です。誤りの選択肢とした「ひらめのまくら」ですが、「比目魚」なら「ひらめ」とも読めるようです。ほかに普通に「平目」とも書き、1字の「鮃」もおすし屋さんの湯飲みなどでおなじみではないでしょうか。

ただし、ヒラメならぬ「比目魚(ひもくぎょ)」は、元は目が一つしかなく、2匹並んで初めて泳ぐことができるという伝説の魚のこと。そこから仲のよい夫婦の表現になったようです。もっとも正解率が示すように、今はあまり使われない言葉です。


正解
糟糠の妻そうこうのつま 82%
かすぬかのつま 10%
ぬかみそのつま 8%
それよりも漢字自体は難しい「糟糠の妻」の方が、夫婦の愛情を示すことわざとして広く好まれているようです。ともに苦労してきた妻を大事にする宋弘という男の発言からきています。

そもそも妻帯者に「富を得たら妻も代えるのが当然」と言う後漢の光武帝の方が、現代感覚からいえばとんでもない話で、それを断るのは当然なのですが、何しろ昔の中国の話ですから、皇帝の勧めより昔からの連れ合いを大事にする潔さが特別に人々の心に刻まれたのでしょう。


正解
別嬪べっぴん 93%
べっせい 5%
べっき 3%
「別嬪」を選んだのは、いうまでもなくNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」にちなみます。また「嬪」の字は、「全訳漢辞海」(三省堂)によれば「嫁ぐ」「嫁がせる」「〔夫に〕服する」などとありますから、少なくとも漢字の語源としては「夫婦」のテーマに関連します。ただし、別嬪の嬪は当て字です。「暮らしのことば 語源辞典」(講談社)によれば
江戸時代の歌舞伎脚本などに「別品」の表記が見られるように、「特別な品」が転じて美女の意に使われたものか。

二葉亭四迷は初期は別嬪、のちには別品を用い、樋口一葉・尾崎紅葉・田山花袋・森鷗外は別品を専用し、泉鏡花は別品から別嬪に移り、夏目漱石は別嬪を専用したという。
確かに、例えばたまたま開いた漱石の「行人」に「なかなか別嬪がいますぜ」というせりふが出てきました。「別品」よりも上品だと漱石は考えたのでしょうか。


正解
夫君ふくん 67%
おっとぎみ 30%
おっとくん 3%
「夫君」は、出題時解説に記したように、「父君」と音が同じなので話し言葉では使いにくい言葉です。では、他人の夫の敬称をどうすべきか。この悩みについて、1997年の毎日新聞コラムに、校閲の女性記者が「お夫じゃ変だし」と題してこんな文章を書いています。
配偶者を指す時、「だんな」「主人」とは言いたくないという女性が、私の周りでは増えている。隷属的なニュアンスが、嫌われるらしい。私も女性だから、女性差別的な言葉や発言にはムッとすることも多いが、ことこれに関しては迷いがある。

自分のパートナーを指すのなら「夫」でも、名前(「高倉が言うには」「健はこう言うの」とかね)でも勝手だし自由だと思う。けど、困るのはひとのパートナーを表現しようとする時だ。それも名前を知らなかったり、そんなに親しくない場合は困りもの。そういう女性に対しては「ご主人」や「だんなさん」の代わりに何と言ったらいいんだろう。「お夫さん」「あなたのハズ」。ふざけてるとしか思われないだろうな。でも、ただ単に「あなたの夫が」なんて言ったら、現状では失礼な物言いと取られかねない。「あなたのパートナー」も、目上の人に向かってはちょっとね。
東京書籍「新聞に見る日本語の大疑問」所収
20年近く前のコラムですが、筆者に現状を聞くと、今も変わっていないといいます。結局、名前を知っていれば「……さん」と呼ぶのが一番無難ということです。

なお、夫婦の話題のついでですが、ある記事で、捜査員に「連れ添われて」護送という文言があり「付き添われて」に直しました。「連れ添う」は夫婦のことですからね。

そうだ、名前の分からない他人の配偶者のことをどう呼ぶか迷ったら「連れ添いさん」「連れ合いさん」というのはいかがでしょう。だめか。

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