しばしば見かける、本来とは違う意味合いで使われている言葉や、辞書ではあまり見つからない表現について、「直す」か「直さない」かをマスコミ各社の用語担当者に聞いたアンケートからまとめました。(調査について詳しくはこちらの①をご覧ください
2015年春のアンケートから。回答したのは20社(全国紙・通信社7、スポーツ紙3、テレビ局4、地方紙6)の用語担当者。どちらとも言えないとした場合は0.5ずつカウントした。話し言葉や寄稿文、引用などの場合は除く。

電卓をたたいている

例文
その商品は女性の間で人気となり、同社では前年度の約3倍の売り上げが見込めると電卓をたたいている。
直す=14社
直さない=6社
全体では、慣用句である「そろばんをはじく」のほか「予想している」「見込んでいる」などに直すという声が多かった。

しかし「電卓をたたく」について問題ないとする意見も少なくなく、「これはこれで近年の慣用句として成立している気がする」「『かぶとを脱ぐ、シャッポを脱ぐ』『筆を折る、ペンを折る』など異なる言い方をするものもある。従来のものにこだわらず、新しい表現を編み出してもいいのでは」「そろばん自体見かけなくなっており、許容できる」「電卓の方が実感できる」などのコメントがあった。

問題があるという立場からは「慣用句の文言まで変えるのはいかがなものか。これが認められるなら『月夜に炊飯器(釜)を抜かれる』『税金(年貢)の納めどき』なども許される」という指摘もあった。


前がかり

例文
突っ張りの応酬から、押し込もうと前がかりになったところをはたき込まれた。
直す=13.5社
直さない=6.5社
「前がかり」は普通の辞書には載っていないが、この場合、ほぼ2対1で「前のめり」「前かがみ」などに直すという声が優勢だった。ただ今回の例文に関しては「相撲の話題だから」直すとし、「サッカーでは使う」という意見が多かった。

競技を問わず「辞書にない言葉はやはり使いたくない」という声もある一方、「ニュアンスは分かる」などと相撲でも許容する意見も一定数あった。

意味については「『攻撃重視』の意味のようだ。『積極的』『攻撃的』と解釈される一方、『守備が手薄』『全体のバランスを考えていない』など否定的なニュアンスで受け取る向きもある」「『つんのめる程に前に傾いた様子、勢い』といった意味で最近よく使われているのではないか?」などという指摘があった。


なごやいだ

例文
受賞記念パーティー会場は、終始なごやいだ雰囲気に包まれていた。
直す=18社
直さない=2社
「なごやかな」に直すという意見が圧倒的だった。「華やいだ」との混同だろう、との指摘も。「三省堂新国語辞典で『なごやぐ』が採用され、おどろいたが『なごやかな』に直しておくのが無難」との声があった。

「どちらともいえない」などとした社は、「採用する辞書もあり、文法的にも否定する材料がない」「見出し語に掲げる辞書も出てきたが、一般に浸透しているとまでは言いがたい」などとコメントした。


2014年と15年のアンケートをまとめたシリーズ「直す? 直さない? マスコミの用語担当者が気になる表現」は今回で終わります。これまでの記事は次のとおりです。

・「鬼門」「匹敵」「かざす」「大食漢」「ひもとく」
・「たなびく」「帯同」「掲げる」「たたずむ」「かみ殺す」
・「合間」「乱入」「逃避行」「勇躍」「醸し出す」
・「連投」「愚直」「走り」「くさびを打ち込む」「胸騒ぎ」
・「肌を刺す」「新味」「綺羅星」「振り絞る」「初舞台」
・「準備万端だ」「絶不調」「盛り下がる」「夜ごはん」
・「先延ばす」「快腕」「タイムリーエラー」「箸を進めていた」
・「受け止めは」「きめ細やかな」「しのぎ合って」「口を突いた」
・「万事休した」「付き出し」「牽引者」「お目にかない」

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