前週の漢字クイズは正解率最高が49%という難問ぞろい。なかでも最低は「甲賀市」(30%)。近くに住んでいても「こうがし」と思いこんでいる人が多いのではないでしょうか。「観音寺市」「泉涌寺」「桜井市初瀬」も30%台前半でした。
〈読めますか?〉結果

この週は「観音」についての固有名詞から出題しました。最も高い正解率が49%という難問ぞろいでした。
大谷寺

正解
観音寺市かんおんじし 32%
かんのんじし 61%
かのんじし 7%
観音は「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」の略ですがこの「おん」が「かんのん」になるのは連声という現象です。しかし固有名詞になると連声にならないものもあります。

その例として出したのが「観音寺市」。高校野球ファンなら、センバツでの優勝もある「観音寺中央高校」が「かんおんじ」だと知っている人が多いでしょう。

ところで私ごとで恐縮ですが、出題者は広島市育ちで、広島県立広島観音高校のある観音という地名はなじみ深いものでした。その読みが実はいずれも「かんおん」だと最近知って、いささか衝撃を受けました。知人はみんな「かんのん」と言っていたように思いますが……。


正解
甲賀市こうかし 30%
こうがし 68%
かぶとがし 2%
「甲賀市」も、近くに住んでいても「こうがし」と思いこんでいる人が多いのではないでしょうか。正解率はこの週で最低となりました。

信楽焼で有名な信楽町があり、国の重要文化財である十一面観音菩薩坐像が本尊の櫟野寺(らくやじ)などもありますが、市名が濁らない「こうか」であることはあまり知られていないようです。

しかしなぜ濁らないのか。この地名は「角川小辞典 地名の語源」によると古くは「鹿深(かふか)」だったとのこと。「かふ」が「こう」になっても後の「か」は「が」にならなかったわけですね。


正解
桜井市初瀬さくらいしはせ 33%
さくらいしはつせ 34%
さくらいしうぶせ 33%
「桜井市初瀬」は奈良の長谷寺のある地名。古来の歌枕で、清少納言も訪れた所です。岩波書店「日本古典文学大系 枕草子 紫式部日記」では「長谷(はつせ)にまうでて」とルビがあります。

「初瀬」で「はせ」と読むのとは逆に「長谷」を「はつせ」とも読ませるということです。固有名詞の表記と読みの多様なこと、かくのごとし。白洲正子「十一面観音巡礼」(講談社文芸文庫)にもあります。
ハセは泊瀬、初瀬、長谷とも書くが、いずれも正しい。それは瀬の泊つる所であるとともに、はじまる所でもあり、長い谷を形づくってもいるからだ。


正解
泉涌寺せんにゅうじ 32%
せんようじ 45%
せんつうじ 23%
皇室の菩提(ぼだい)寺である京都の「泉涌寺」は、三笠宮さまが「御寺(みてら)泉涌寺を護(まも)る会」総裁を長く務め、皇室ゆかりの寺院の護持や文化継承に尽力されたそうです。楊貴妃をモデルにしたとされる「楊貴妃観音」についての二つの文章を引用しましょう。
気になったのは小さな紅唇の上下と、あごにひょろひょろと描かれているひげ。なぜこの美女に似せた観音像にひげをつけたのか、どうにもへんで納得ゆかない。

岡部伊都子「観光バスの行かない… 埋もれた古寺」新潮社

横の壁にこんな貼紙があった。

「口もとの曲線は慈悲を説かれる口の動きです。おひげではありません」

仏像の唇の回りにある線のことを説明しているのだった。まあ、ひげだと思われてしまえば美人も台なしだろう。

「本当に口の動きかねえ。ひげはひげじゃん」

“実際そう見える”ことにこだわるみうらさんは、ぴしゃりとそう言って御堂を出た。

いとうせいこう・みうらじゅん「見仏記」角川文庫
ひげかどうかという一見どうでもいい問題は、観音が女性か男性か、はたまた性別を超えた存在なのかを考えさせる、けっこう深遠なテーマなのです。


正解
大谷磨崖仏おおやまがいぶつ 49%
だいこくまがいぶつ 27%
おおたにまがんぶつ 24%
最後に「大谷磨崖仏」。昔「神様、仏様、稲尾様」というフレーズがはやりましたが、日本一になった日本ハムの大谷投手の人間離れした活躍も「神様仏様」とたたえられても不思議ではありません。「おおたにまじほとけ」と冗談で読んで投稿していただいた方もありました。

まあそれはともかく、今回は「おおや」という地名でした。谷というのは「や」「たに」に加え「長谷」の一部でもあるし、まことに読むのがやっかいな漢字です。

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