「伝説」がテーマの漢字クイズは正解率が低い順に「蒼頡」(55%)、「八塩折」(76%)、「大太法師」(77%)、「辟邪」(80%)。「韋駄天」(96%)はさまざまなプロ野球選手の呼び名として多く反応が寄せられました。
〈読めますか?〉結果

この週は「伝説」がテーマでした。全体的に正解率が高めで、それぞれの分野で関心がある方からフェイスブック、ツイッターで投稿がありました。

韋駄天像(北京・妙応寺)
正解
韋駄天いだてん 96%
おだて 3%
らくだてん 1%
「韋駄天」はリオデジャネイロ五輪陸上男子リレーの愛称「韋駄天スプリンターズ」が出題のきっかけですが、ツイッターではそれについてでなくプロ野球選手の方に反応が多く寄せられました。きのう優勝した広島カープ・菊池涼介内野手の応援歌の「韋駄天菊池」、DeNAベイスターズ・梶谷孝幸外野手は「蒼い韋駄天」。「韋駄天大野」「亀沢恭平」という反応も。「なるほど。様々なところで『韋駄天』という言葉は使われているようですね」というツイートもいただきました。


正解
八塩折やしおり 76%
やちまた 16%
やつしおおり 8%
「八塩折」は「なんとタイムリーな」「シン・ゴジラの謎がひとつ解消されました」「八塩折ってあのシーンを観た人のうちどれだけの人が正しく意味を把握できたのだろう」などの反応がありました。映画「シン・ゴジラ」の中では「ヤシオリ作戦」として出てきますが、この言葉の説明が一切ありません。不親切なようですが、これもたぶん製作側の戦略なのでしょう。映画館を出た後も検索させるなど「引きずる」ことを狙っていると思われます。なお、この言葉は広辞苑など比較的大きめの辞書には載っていますが大体「やしおおり」の読みになっています。ただ角川文庫の「古事記」のルビは「やしほり」になっていて「やしおり」も日本国語大辞典に見出し語として載っています。


国宝「辟邪絵・神虫」(奈良国立博物館蔵)
正解
辟邪へきじゃ 80%
ひじゃ 15%
しんじゃ 6%
「辟邪」も実は怪獣ネタ。山口謡司著「漢字はすごい!」(講談社現代新書)には辟邪はこのような怪獣として紹介されます。
二本の大きな鹿のような角、虎のような大きな耳に、メガネザルのような大きな目、大きく口を開いて鋭い牙を見せ、長い舌を下にペロリと垂れている。
しかし8月まで東京で、現在は大阪で開催中の「大妖怪展」の出品作の一つ、国宝「辟邪絵・神虫」という絵は、巨大なガのような虫。大きなガの姿の怪獣といえばモスラを連想されます(絵自体はモスラと似ても似つきませんが)。ところで今回のゴジラは……うーん、これ以上はネタばれですかね。ただこれだけは言いたい。これまでのゴジラは、海からやってくるのにあのずうたいで見つからずに泳いで(?)きて突然上陸するというところに不自然さがあったのですが、「シン・ゴジラ」ではこれまで誰も思いつかなかった設定でクリアしています。


正解
大太法師だいだぼうし 77%
おおたぼうし 18%
おおぶとぼうし 5%
海からやってくる巨大な怪物といえば、民俗学者の柳田国男は「ダイダ坊も海から来ると想像したのではあるまいか」と記します(ダイダラ坊の足跡)。ということで「大太法師」。いや、それは後付けであり、この言葉もちゃんと国語辞典にあるということが面白いと思って選びました。なお柳田国男によると、東京都世田谷区の「代田」という地名はダイダラ坊つまりダイダラボッチから来ているそうです。


正解
蒼頡そうけつ 55%
そうてん 39%
そうきち 6%
「蒼頡」がこの週で最も低い正解率となりました。この出題時「阿辻哲次さんの本に、よく出てきますね」という書き込みがフェイスブックに寄せられました。では阿辻哲次著「漢字道楽」(講談社)から引用しましょう。
蒼頡が漢字を発明したという伝説を「蒼頡造字伝説」という。これは中国の戦国時代に成立したものと考えられるが、それにしても地上のどこにでもあり、ふつうの人間なら気に留めることすらない鳥や動物の足跡から、なんと文字を発明してしまうというのだから、蒼頡は観察眼が非常にすぐれていた人物のようだ。

常人にはとうていおよばない、この卓越した観察眼の鋭さを、古代の中国人は四つの目で表現した。

実際に蒼頡という一個人が漢字を発明したのではないことはいうまでもない。それはあくまでも伝説にすぎない。しかしその架空の話のなかに、実際に文字が作られてきたプロセスを垣間見ることができるのは非常に興味深い。
しかし、ふと湧いた疑問ですが、「四つの目」というのは単に観察力の鋭さの象徴なのでしょうか。漢字は見た目からできた象形文字のほか、目には映らない心理状態やさまざまな抽象概念を表す字があります。蒼頡に備わるとされる四つの目のうち二つは観察する肉体的な目としても、別の二つの目というのは、目に見えない抽象的なことを捉えて漢字として表したことの象徴ではないでしょうか。単に四つ目に着目すると怪人(たとえば往年の「黄金バット」の悪役がそうでした)としか思えませんが、そう解釈すると、漢字の発明がどれだけ人知を超えたことだったかと想像されます。

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