前回に続き今春の新入社員2人に、就職活動の様子などについて聞きました。個性的な人柄もうかがえるフリートークです。

前回の記事:どうしてこの仕事に? 新入社員に10の質問

――橋山さん、公務員と校閲の仕事の共通点はありますか?

橋山:共通点はないです。僕が最後やってたところが区役所の介護保険担当で、介護保険の書類の整理の仕事、窓口業務、電話業務と他の部署との調整業務などをやってました。電話も多分1万回以上とったと思いますし、判子も1万回以上打ってます。この会社に入って判子を押したのはインフルエンザになったときくらいです。

――研修中に休んだんですよね。

橋山:研修施設に行ったときに具合が悪くなって途中で帰ったんです。熱が39度くらいあって、寝て治るだろうと思ったら40度近くまであがって。もう僕は正岡子規になるんだと。もうほんと死ぬかと思いましたよ。病床六尺で、天井を見ながら。

――(笑い)何か脱線してしまったけど、橋山さん、入って3カ月、校閲に向いていると思いますか。公務員になって3カ月時点と比べて。もう覚えてないかもしれないけど。そのときの気持ちと比較して。

橋山:比較すれば、いまのほうが楽しくやれているかと。みなさんにご迷惑をおかけしないようにしていますけれども。

――谷井さんは就職活動中に、うちの部の人に話を聞いたということだけれど、どういう話を聞いて校閲記者になる決意を固めたのか、そこのところを。

谷井:私が日常生活で感じてることと、その人が当時就職するときに感じてたことが似てたということがあって。おこがましいんですけど。日常生活で耳に入ってくる日本語とか、テレビのテロップとかでも、ちょっとイラっとくるというか、何これ、っていうのがあって。そういうフラストレーションがあるんです、っていう話をしたら「分かるよ」って言ってくれて、ああ、ありがとうございます、みたいな。ついて行きますという感じになったんです。

――その経験が大きかったということね。

谷井:そうですね。その後、内々定いただいたあとに大学の先輩で最近校閲で入社した別の方ともお話ししたりして、それで改めてこの道に進もうかなと。

――橋山さんは面接の時、動機とか聞かれましたか。

橋山:聞かれたと思いますけど何話したか忘れてしまいました。面接では、内定の前祝いを内定前にしたっていう話をしました。

谷井:えっ(笑い)。

橋山:あと、ローカル紙の校閲記者をしている後輩から勧められた、という話もたしか面接ではしました。

――谷井さんが言葉に興味を持ったきっかけは。本をよく読んでいたとか。

谷井:そうですね。本はわりと読んでた方だと思います。あと、中学校のときに担任の先生が「掃除は完璧に」ってスローガンを黒板に書くじゃないですか。その「完璧」の字を見たときに私「璧」を「壁」だと思ってて「あっ先生間違えてる」って言って、理科の先生だから漢字もわかんないのか、ぐらいの上から目線で。なめてたんですよ世の中を(笑い)。正直じゃないですか、中学生だから。それで次の授業に国語の先生が来て「先生、これ間違ってますよね」って言ったら、こういう字なんだよ、完璧の璧は下が玉になるんだよ、こういう語源があって、こういう成り立ちがあるんですよ、って言われて「うそだろ」と思って調べたら本当にそうで。知ってると思っても知らないことがあったり、言葉にも理由があるっていうことにであったいちばん最初がそれぐらいかな。

――橋山さんがこの道を選んだのは。

橋山:今年の3月まで仕事帰りに大学院に通ってまして、誰だったか忘れたんですけれども、教員の方に、校閲だったら研究で身につけたことを生かせるかもしれないと言われたことがあって、そのことも影響していると思います。他にも、D・H・ロレンスの研究をしている文学部の先生と研究室でよくお茶を飲みながら雑談をしていました。ある時、彼女が学生の論文指導で校正記号を使っていることを話してくれたことがあります。この道を選んだのは、確かに校閲の仕事に興味があったというのもありますが、後押ししてくれる人たちが身近にいたのが何よりも大きかったです。

――2人とも、新聞各紙を読んだ上で「毎日」を受けたと思うんですが、そのへんのことで何かあれば。

谷井:祖母から強く言われて。「新聞なら絶対『毎日』」って。冗談で言ってたんですよ、「新聞社にも校閲あるらしいんだけど受けてみようかな」とか言ってたら「じゃあ『毎日』受ければ」って祖母に言われて「あっ、そうか」と思って「毎日」を受けました(笑い)。一応読み比べとかはしてたので。読む側じゃないですか校閲って。だから新聞全体の論調みたいなものに自分がちょっとでも違和感を持ってたら仕事として読み続けることができないとおもうので、そこは考えました。

橋山:1次面接でも話をしましたが、僕は「新聞ダイジェスト」を通して社説を読み比べていました。まだ入社したばかりの僕が言うのもおこがましいですが、社説が各新聞の社論をかたどっているというか。各新聞いろいろなことを論じていたんですが、「毎日」は異なる主張をぶつけ合っていて、バランスが取れていると感じたんですよね。最近で言えば、井上達夫さんと木村草太さんの憲法と安全保障の対談とかですかね。僕は大学院で日本政治思想を専攻していたのですが、福沢諭吉の「文明論之概略」を読んだことがあって。そのなかに「多事争論」という言葉が出てきて。まあ、その言葉を僕なりに解釈すると、議論のなかで少数意見や異なる意見があっても共存しあって、議論を高めていくというようにとらえているんですが、「毎日」の社説や記事を見ると「多事争論」という言葉がしっくりときました。いや別に他の新聞社が偏っているって言っているわけじゃないですよ。何かに引き寄せられたというか(笑い)。

――最後に、いま校閲記者を目指している人にこういうことをしといたがいいよっていうアドバイスをください。

橋山:僕は特になにもないので(笑い)。準備しててもその時々でいろいろ変わっていくじゃないですか、役員の方も変わりますし、そこらへんはめぐりあいというか、ご縁があるかないかっていうのは運じゃないでしょうか。準備したのにうまくはまらなかった、みたいなことは多分よくあることだと思うんですよ。だからそんなことは気にせずに頑張っていただければと。

――分かりました。

谷井:私はもともと自分の行動とかを、なんでこうなったとか考えたい方なんです。なので、すっごい考えました、面接の前とかは。どんな質問が来ても自分はこうだっていうのを一つ持って。そこからぶれないような答えができれば、向こうがいやなことでも自分であることをアピールできる。あと、2次面接の前に記者の方に「あなた、この会社にいそうね」と言ってもらったことを自信の代わりにしたりとか。

――分かりました。お二人ともありがとうございました。
【聞き手・構成 稲益達朗】

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