今年の春、東京本社の校閲グループには2人の新人が配属されました。どんな人が校閲記者になったのか。この仕事を選んだ理由や経緯、実際に働いてみての感想など、10個の質問に答えてもらいました。

質問1、新聞社の校閲を志望した動機をおしえてください

橋山(30代男性):
大学を卒業して北九州市の市役所職員として5年間勤めました。もともと研究職志望で日本政治思想の文献を読み込むのがライフワークなのですが、ことばそのものを追究する仕事がしたいという思いが強くなり新聞社の校閲部の門をたたきました。

谷井(20代女性):
情報の伝達手段が多様化している現代社会の中で、信頼できる情報を発信する側に立ちたいと思い、志望しました。新聞記事では特に、日本語の用法にこだわることができる点が私にとって魅力的でした。
質問2、校閲の存在を知ったのはいつどのようにしてですか

1年ほど前に、地元のローカル紙の校閲記者をしている大学の後輩から校閲の仕事について教えてもらいました。記憶が定かではないのですが、そのときに後輩から「橋山さんは校閲記者に向いていると思いますよ」と言われたのが校閲の存在を強く意識するきっかけになったと思います。

大学生になって間もないころ、「校閲さんはこういうところまでチェックします!」という内容のネット記事を見て知ったのが最初だったと記憶しています。世の中にはこういうおもしろい仕事もあるのだな、と思いました。
質問3、校閲記者になろうと決めてから就職するまでの経緯をおしえてください

上記の後輩とのやり取りや神職を務めている友人から自分に合った仕事をすべきだという勧めもあって、仕事をしながら転職活動を行いました。毎日新聞を選んだ理由はブログ「毎日ことば」で仕事の雰囲気や社員の顔が見えたので。願書を出したところ、ものの1カ月で決まってしまって自分でも驚いています。

校閲という仕事に就きたい、というのは就職活動が始まる前からぼんやりと意識していましたが、新聞社に校閲記者という職種があることは就職活動が始まって、友人に教えてもらって初めて知りました。そのため、決意してからじっくり準備する時間はなく、ただ目の前の課題をひとつずつ乗り越えていくのがやっとでした。そんな中でも、実際に校閲記者として活躍しておられる先輩方とお話しする機会が得られたのはとても大きかったです。
質問4、校閲という仕事について周囲にはどういう言い方で説明していますか

新聞記事の誤字脱字や事実関係をチェックする部署だと言っています。石川啄木は若い頃、校閲記者だったと付け加えています。

基本的には「紙面の誤字脱字を直したり、書かれていることが正しいかどうか調べて確かめたりする仕事」と説明しています。
質問5、校閲記者になったことについて周囲の反応はどうでしたか

前職が公務員だったので身の回りの親族、友人たちは衝撃的だったようで、いまでも「どうして安定を捨ててまで新聞社に入ったのか」と尋ねられることがあります。思うに、何事も向き不向きがあり自分に合った仕事だと考えて転職したので、経緯をきちんと説明すると納得してもらえます。余談ではありますが、公務員だからといって安定しているわけではなく人によってはその仕事内容で苦労することがありますし、激務の部署では定時では帰れないところもあります。周囲の反応をみるたびに何事も固定観念にとらわれないようにしたいと思っています。

新聞社に勤務しているとはいえ、校閲記者は表に出ない職種なので、これといった反応はありませんが、購読者である祖父母から「今日も読んだよ」といった連絡がくると、背筋が伸びる思いがします。
質問6、実際に仕事を始めてみて始める前のイメージと違った点はありますか

仕事の内容については前述した後輩から実務的な手順を教わっていたのでイメージ通りでしたが、市役所とは違い新聞社の現場の雰囲気は大きく異なっているので、自分がいままで積み重ねた経験が足かせになるところはunlearning(消去学習)しています。

表記を基準に合わせるための直しが多いことはイメージと違っていて驚きました。他に挙げるとしたらスピード感でしょうか。時と場合によりますが、想像以上の慌ただしさでした。
質問7、仕事を始めてから日常生活で意識が変わったことはありますか

朝型から夜型の生活に変わりリズムが激変したので、最初は慣れるまで苦労しました。また、座りっぱなしなので肩こりや腰痛にならないように毎日近くのスポーツジムでウエートトレーニングをしたり、プールで泳いだりして健康に気をつけています。

テレビやラジオなど、音声で情報を得るときに、これまでひとまとまりの流れでざっくりと要約して理解していたものを、どこで?誰が?何を?と区切られた形で重要な点を頭へ入れる意識が働くようになりました。
質問8、仕事上でいちばんこたえた失敗があったらおしえてください

一度教わったルーティンワークを忘れていて、先輩から厳しく指導を受けたことがありました。指導された内容についてはメモを書き残していたのにもかかわらず、それを見落としていました。校閲の仕事は常に未知の記事に向き合っていますが、一方で、ルーティンワークも確認作業を怠らないようにしたいと思います。むろん、厳しく指導をいただけたことには感謝をしています。

群馬県の遺跡についての記事中の地図で遺跡の位置が間違っていた失敗は、もう一歩踏み込んで調べていたら防げたものなのでとても悔しかったです。
質問9、仕事をする上で好きなページや苦手なページはありますか

一通りやってみてスポーツ面が自分との相性が良いと思っています。スポーツ面はチーム名、日程、勝敗など調べるものがだいたい決まっているので、時間があればチェックするポイントがはっきりしています。たとえば、バレーボールの試合でセットカウント3-1と表記されているものが実際は3-2だったり、サッカーの勝者と敗者の点数がひっくり返っていたりしていたところになおしを入れて難を逃れたことがありました。とはいえ、柳の下にいつもドジョウはいないといいますし、油断すると訂正記事を出してしまいかねないので、注意深く見通していきたいと思います。

苦手なページはあまり意識していないのですが、写真についている見出しやイラストの誤植は見落としがちなので、注意が必要だと思っています。また、イラクの地図が載っている記事で「イラクの首都バグダッドの約50キロ東にあるファルージャ」と書かれてあったものが、実際は「……西にあるファルージャ」ということがありました。いまはイラストと記事が関連しているものについては、そこも照らし合わせています。

まだ好き嫌いを言えるほど経験を積んでいないためお答えしかねます。
質問10、今から5年後にあなたはどのような校閲記者になっていると思いますか

5年後は自分の得意分野を校閲に生かせるようになりたいと思います。趣味は小説や思想書を読んだり、小説を書いたりすることです。いまは村上春樹の英訳版(訳Ted Goossen)の小説“Wind/ Pinball: Two Novels”を読んでいます。また、思想書は丸山眞男や廣松渉などを読んでいます。休憩中にはバタイユやショウペンハウエルなどに慣れ親しんでいる先輩と文学・哲学談議に花を咲かせたことがあります。そういった仕事外での活動でも言語表現や感覚を磨いていき、校閲の仕事に生かせる記者になりたいと思います。

現時点より5年分、校閲記者として成長していることが最低限の目標です。5年後の自分も、初心を忘れずに精進してもらいたいと思います。
就職活動の様子なども聞きました。
新人に聞く② 就職活動の様子や会社を選んだ理由は?

【聞き手・構成 稲益達朗】

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