前週の漢字クイズで最も難しかったのは「冀う」でしたが、正解率は59%と高め。「発願」(69%)は仏教用語ですが、「発起」のように現代人が一般語だと思っている語が元は仏教語という例は多くあります。
〈読めますか?〉結果

この週は「願い」。七夕と、選挙の「お願い」が街にあふれた時期でした。


正解
冀うこいねがう 59%
こう 23%
かなう 19%
「冀う」が最も低い正解率でしたが、それでも59%というのはなかなかです。ただし3択の消去法で当たった人は少なくなかったかもしれません。いまこの字を使うのは、作家でもほとんどいないでしょう。と思ったら平野啓一郎さんの芥川賞受賞作「日蝕」で使われていました。
冀(こいねがわくは)、上(かみ)の誓いと俱に、下(しも)の拙き言葉の数々が主の御許へと到(とど)かむことを。
高浜虚子も岩波新書「俳句への道」(のち岩波文庫)で書いています。
酷暑と言へば早く秋冷の候になる事を冀ひ、酷寒と言へば早く春暖の候になる事を冀ふのが人情であります。然し、その又酷暑の中に、汗を流して働く快味もあれば、山に登り海に遊ぶ涼味もあるのであります。

正解
願糸がんし 72%
ねがいと 23%
がんいと 5%
「願糸」では「汝が為の願の糸と誰か知る」という虚子の句を紹介しました。いかにも七夕らしいロマンチックな句ですが、残念ながら「願糸」そのものの使用句ではありません。俳句では漢語よりは軟らかい和語が好まれるようです。その「願いの糸」も、糸から短冊に変わった現代では、歳時記のみに載る絶滅危惧季語かもしれません、


正解
後生願いごしょうねがい 89%
こうしょうねがい 6%
こうせいねがい 5%
「後生願い」は絶滅危惧を通り過ぎて死語でしょうか。「後生だから」という懇願の決まり文句も、今あまり使われませんね。後生は「後生大事」という形で主に生き延びている気がします。なお読みは「こうせい」と変わる「後生」は「先生」の対語。「後生畏るべし」という論語の言葉で有名ですが、校閲・校正者にとっては、「後世」の誤字に注意しなければならないことと「校正おそるべし」というもじりでも知られています。


正解
発願ほつがん 69%
はつがん 24%
たちねがい 7%
「発願」は仏教用語。「発」をホツと読むのは「呉音」。ハツは「漢音」です。呉音は「発」の例としては他に「発心」などがあるように仏教用語が多いのですが、それ以外でも「発作」「発起人」など一般的に使っています。ただ、現代人が一般語だと思っている語が元は仏教語という例は多く、「発起」ももとは「信仰心を起こして仏道に入ること」という意味だったようです。


正解
望蜀ぼうしょく 90%
ぼうどく 8%
ぼうぞく 2%
最後におわびです。「望蜀」の出題時、解説で誤りがありました。「『後漢書』の『人足らざるを知らざるに苦しむ、隴(ろう)を得て蜀を望む』が出典」と書いてしまいましたが、「足らざるを」は「足るを」の間違いでした。読者の指摘で直りました。申し訳ありません。「校正おそるべし」を肝に銘じてチェックしなければと猛省しています。

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