前週の漢字クイズで最も正解率が低かったのは「無人岩」(41%)。ところでネットでは国立西洋美術館について「都内初の世界遺産へ」という見出しが散見されますが、世界自然遺産の小笠原も東京都内ということが忘れられているのでしょうか…
〈読めますか?〉結果
片麻岩 by siim
この週は「県の石」でした。日本地質学会が5月10日に「県の石」を発表したことを受けたものです。どうして「都道府県の石」というタイトルじゃないの?という突っ込みはひとまずおいといて、まずは一覧をご覧ください。

正解
橄欖岩かんらんがん 83%
しゅろがん 9%
あえらいわ 7%
北海道の岩石は「かんらん岩」となっていますが「橄欖岩」でもけっこう読めています。画数は多くても「つくり」の音読みそのままなので、言葉を知らなくても読みは推測できます。鉱物・岩石に詳しい宮沢賢治は童話「虔十公園林」のラストや「種山ケ原」の冒頭に使っています。「種山ケ原」は迷子の子供の夢を描いた話。
種山ケ原というのは北上山地のまん中の高原で、青黒いつるつるの蛇紋岩や、硬い橄欖岩からできています。

この「蛇紋岩」は岩手県の石に選ばれました。地質学会の「県の石」の解説では「蛇紋岩はかんらん岩を起源とする岩石で、詩人で童話作家の宮澤賢治が特別な親しみを持っていたことでも知られる」とあります。

正解
輝石きせき 82%
きしゃく 14%
てるいし 4%
賢治には「輝石」を使った詩もあります。「春と修羅」第2集にある「暁穹への嫉妬」という詩の冒頭。
薔薇輝石や雪のエッセンスを集めて、
ひかりけだかくかゞやきながら
その清麗なサファイア風の惑星を
溶かさうとするあけがたのそら
薔薇輝石……名前だけでもなく実物も桃色の美しい石なのですが、輝石の一種ではなく「準輝石」に当たるそうです。岩手県野田村で取れるとのことで、賢治もきっと実物を見たに違いありません。

岐阜県の鉱物は「ヘデン輝石」。ノーベル物理学賞で有名な施設、スーパーカミオカンデのある「神岡鉱山」から取れるそうで、地質学会の解説には「神岡鉱山は、飛騨片麻岩中に含まれる結晶質石灰岩に花崗岩マグマ起源の熱水が接して形成されたスカルン鉱床からなる」とあります。

正解
片麻岩へんまがん 83%
かたまがん 11%
かたあさいわ 6%
ここにも出てくる「片麻岩」は福島県の石になりました。字面は簡単ですが「橄欖岩」と同率になったことに知名度の低さがうかがえます。

正解
無人岩むにんがん 41%
ないといわ 30%
むじんいわ 29%
今回最も難しかったのは「無人岩」。小笠原の古名「無人」にちなみます。時々小笠原諸島の広告などで「ボニンブルー」という言葉を見ることがありますが、この「ボニン」は「無人」を外国人が聞き違えたことによるそうです。ここで素直に考えると「ぶにん」から「ボニン」になりそうなものですが、無人岩は「むにん」。小笠原にはほかにも「ムニン」が付く固有種の植物が多いそうです。ところで、ネットでは国立西洋美術館の世界遺産登録勧告について「都内初の世界遺産へ」という見出しが散見されますが、世界自然遺産の小笠原も東京都内ということが忘れられているのでしょうか。

正解
凝灰岩ぎょうかいがん 94%
ぎょうはいがん 3%
ぎはいがん 3%
「凝灰岩」は今回最も正解率が高くなりました。宮沢賢治の童話にも当然出てきます。たとえば「台川」。いやこれは童話というより散文詩に近いかも。まるで夢の中で学校の野外実習を思い出しているような、とにかく不思議な文体です。
「先生この石何て云うのす。」どうせきまっている。
〔凝灰岩。流紋凝灰岩だ。凝灰岩の温泉の為に珪化(けいか)を受けたのだ。〕
光が網になってゆらゆらする。みんなの足並。小松の密林。
なお、熊本県の石とされた「溶結凝灰岩」が展示してある阿蘇火山博物館は現在休館中です。いうまでもなく、火山活動ではなく地震による影響です。いずれにせよ、早く安全に見学ができる日が来ることを祈っています。
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