「3球フォークボールを連投」「愚直に稽古を積んだ大関」「当時走りだったビデオデッキ」「悪い流れにくさびを打ち込む」「胸騒ぎのするような楽しいアトラクション」……


しばしば見かける、本来とは違う意味合いで使われている言葉や、辞書ではあまり見つからない表現について、「直す」か「直さない」かをマスコミ各社の用語担当者に聞いたアンケートをまとめた第4弾です。(調査について詳しくは①をご覧ください

2014年秋のアンケートから。回答したのは21社(全国紙・通信社7、スポーツ紙3、テレビ局5、地方紙6)の用語担当者。どちらとも言えないとした場合は0.5ずつカウントした。話し言葉や寄稿文、引用などの場合は除く。

連投

例文
3球フォークボールを連投、最後は三振に切って取った。
直す=16.5社
直さない=4.5社
「連投」は「1試合のなかでは使わない」「ゲーム単位の言葉」「連日投げるのが連投」「一部辞書では例示としてあげているが、『試合』に対して使うのが慣例か」などとして、この場合は「直す」とする意見が多数を占めた。直し方の例は「続けて投げ」「3球続けてフォークボールを投げ」など。

一方で約2割が「違和感がない」「実際に使われている」などを理由に「直さない」とした。「『日』単位を『球』単位に応用しただけだから特に問題はない」「スポーツの用語は治外法権なところがあり、辞書が採用するとか一般に定着するとかでなく、その世界で通用していればOKになる傾向がある。この表現も運動面記事では定着している表現と言っていいのでは」との声も。ただスポーツ紙で「直す」とした社もあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
投手が連続する2試合以上に登板する


愚直

例文
一心不乱に四股を踏み続けるなど愚直に稽古(けいこ)を積んだ大関は今場所、立ち合いの力強さを取り戻した。
直す=12.5社
直さない=8.5社
意見は割れた。多数派は「直す」だったが、理由は「他人に対して使うと失礼になる言葉のように思う」「『融通のきかない』などマイナス点を含んだ表現のため」「自分がへりくだって表現するもので第三者がいうのには違和感」などが挙がった。直し方は「きまじめ」「一生懸命」「ひたすら」「地道に」など。

一方、「直さない」とした理由は「本来は損な役回りの場合に使うが、『ばか正直』の意味もありさほどの違和感はない」や「肯定的なニュアンスで使う場合もある」など。また「マイナスの意味かどうか判断が難しい」との指摘も。直し方の例として「愚直なまでに」を示した社もあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
正直すぎて融通が利かない。ばか正直


走り

例文
1980年代初め、当時走りだったビデオデッキを購入して対戦相手の研究を重ねた。
直す=15.5社
直さない=5.5社
数字はほぼ3対1だったが、「直す」の中には「はしり」と平仮名なら使うとする声もあり、表現を問題とすれば差はもっと縮まる。また、テレビ局では「直す」としたところがほとんどで、分かれたのは主に活字メディアだった。

「直す」理由は「『世に出て間もない』ということと『物事の先駆け』というのは少し違う」など。直し方は「発売間もない」「まだ珍しかった」「出回り始めた」などが挙がった。

「直さない」理由では「本来は『前触れ』の意味だが、最近は『流行の最先端』として誤解している人が多くなり、わざわざ直さなくてもよいのではないか」などがあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
季節に先駆けて出る魚や野菜、果物など。物事のはじめとなるもの


くさびを打ち込む

例文
ベテランの一発が、連敗中のチームの悪い流れにくさびを打ち込んだ。
直す=19.5社
直さない=1.5社
「直す」という意見がほとんどだった。直し方は「歯止めをかけた」や悪い流れを「断ち切った」「食い止めた」「変えた」など。

例文の表現については「『勢力を二分』の意味が、単に『分断』と解釈されている」「敵勢力を分断する場合に使うのが基本なので、『連敗を分断』では、次にまた負けるような感じがする」などの指摘があった。「『くさびを打つ』との不完全表現がしばしば見られる」との声も。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
敵陣に攻め入って勢力を二分する


胸騒ぎ

例文
フェスタでは、胸騒ぎのするような楽しいアトラクションがたくさん用意されている。
直す=21社
直さない=0社
「直さない」はゼロ。迷うという声もなかった。「胸騒ぎ」は「心配事や悪い予感があるときに使う」「マイナスのドキドキを表す」ため、「胸が躍る」「ワクワクする」などに直す、という意見で一致した。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
心配や不吉な予感などで胸がどきどきする
(随時掲載します)
〈直す? 直さない? マスコミの用語担当者が気になる表現〉 他の記事はこちら
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