「雲の合間に広がる眼下の眺め」「学校に乱入した○○容疑者」「敵の攻撃を受けないよう逃避行を続けた」「メダル候補に勇躍」「物議を醸し出す」……。
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しばしば見かける、本来とは違う意味合いで使われている言葉や、辞書ではあまり見つからない表現について、「直す」か「直さない」かをマスコミ各社の用語担当者に聞いたアンケートをまとめた第3弾です。(調査について詳しくは①をご覧ください

2014年秋のアンケートから。回答したのは21社(全国紙・通信社7、スポーツ紙3、テレビ局5、地方紙6)の用語担当者。どちらとも言えないとした場合は0.5ずつカウントした。話し言葉や寄稿文、引用などの場合は除く。

合間

例文
「天望デッキ」に上がった観光客は、雲の合間に広がる眼下の眺めに感嘆の声を上げていた。
直す=14.5社
直さない=6.5社
例文の「合間」の使い方については「慣用的ではない」「奇異に感じる」という指摘があり、「(合間は)時間的な隙間(すきま)を指す言葉で、空間的な隙間には適用されない」などとして、「切れ間」「雲間」などに直すとする意見が多数だった。

一方で「直さない」とする声も3分の1近くあり、「合間には空間的な隙間の意味も含むので許容できる」とした社もあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
物事の途切れた短い時間



乱入

例文
中学校に乱入した田中容疑者は、すぐに教師らによって取り押さえられた。
直す=8.5社
直さない=12.5社
意見が分かれ、両論併記も3社あったが、「直す」という意見は少数派になった。直す理由は「(乱入は)大勢で乱暴に押し入ること」「押し入ったのが複数でないと使えない」などが挙がり、単に「押し入った」「侵入した」などにするとした。ただ、直す派の中にも「最近では一般的に使うので許容範囲かもしれない」と付記するものがあった。

「直さない」という意見では「もはや定着したのでは」「『闖入(ちんにゅう)』の言い換えとしては許容範囲」「『乱入』と『爆笑』は許容か」などのコメントがあった。中には「広辞苑などでは『大勢が』という意味は載せていない」からと許容しつつも、「多くの辞書では『大勢』なので、自分で文章を書く場合は使いたくない」とする声もあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
大勢が乱暴に入り込む



逃避行

例文
太平洋戦争末期、敵軍の攻撃を受けないよう密林の中、逃避行を続けたという。
直す=16社
直さない=5社
多くは「逃げ続けた」などに直すとした。逃避行は「事情があって世間の目を逃れることで、単に逃げるということではない」などが理由。

一方で、「直さない」も4分の1弱あった。「人目を避けて移り歩くと見て」のほか、「『世間をはばかる』との前提が共有されているとは思えない」という声があった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
世間を逃れ人目を避け、移り歩いたり隠れ住んだりする



勇躍

例文
予選を全体の3位となる好記録で通過、メダル候補に勇躍した。
直す=20社
直さない=1社
「勇躍」は「奮い立つ気持ちの表現」であるなどとして、「躍進した」「躍り出た」「浮上した」などに直すとする声がほとんどだった。

「このような使い方を何度か目にしたが、字面に引っ張られているだけという印象がある。また『海外へ勇躍する』のように『雄飛』と取り違えている例も散見されるが、『勇躍、海外へ渡る』と直している」というコメントもあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
勇み立って心が躍る



醸し出す

例文
橋下大阪市長の発言が物議を醸し出している。
直す=21社
直さない=0社
「直さない」はゼロだった。直し方の例は「醸している」「醸し始めている」「呼んでいる」など。

「物議を醸す」で慣用表現だという声のほか、「醸し出す」になると「そこはかとなく」という弱い表現になり、「物議」という強い表現と相いれない、という意見もあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
ある感じや雰囲気などを、そこはかとなく作り出す
(随時掲載します)
〈直す? 直さない? マスコミの用語担当者が気になる表現〉 他の記事はこちら
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