「命」がテーマの〈読めますか?〉で最も正解率が低かったのは「行年」(52%)でした。この言葉は辞書によって扱いにばらつきが見られ、生きている人の年があるかどうかで大きく分かれます…

〈読めますか?〉結果
この週は東日本大震災を意識し「命」がテーマでした。

もっとも各語の解説に大震災に触れたものは一つもありません。かえって「命どぅ宝」という言葉が別の地域性を表すことになりました。
正解
命どぅ宝ぬちどぅたから 83%
いのちどぅほう 9%
のちどぅたから 8%
沖縄方言にもかかわらず「命どぅ宝」はかなりの人が読めるようです。「にもかかわらず」という表現が不適切に思えるほど、いまこの言葉は普遍性を獲得しているのかもしれません。ただ、この言葉を載せている辞書は調べた限りでは見当たりませんでした。


正解
行年こうねん 52%
きょうねん 29%
あんねん 19%
辞書といえば、「行年」の扱いにばらつきが見られたので報告します。

・広辞苑
こうねん【行年】(ギョウネンとも)生まれてこのかたの年。年齢。生年(しょうねん)
ぎょうねん【行年】①享年に同じ②→こうねん
・岩波国語辞典
こうねん【行年】①→きょうねん(享年)②生まれてから経た年。生年(しょうねん)
ぎょうねん【行年】①→きょうねん(享年)②こうねん(行年)
・新明解国語辞典
こうねん【行年】その人が今まで生きてきた年月
「ぎょうねん」は見出し語になく、享年の項に(「行年(ぎょうねん)」とも言う)というカッコ書き

・三省堂国語辞典
こうねん【行年】→ぎょうねん(行年)
ぎょうねん【行年】享年(キョウネン)。こうねん
・大辞林
こうねん【行年】これまで生きてきた年数。→ぎょうねん(行年)
ぎょうねん【行年】《「行」は経歴の意》「享年」に同じ。
・学研現代標準国語辞典
こうねん【行年】→ぎょうねん
ぎょうねん【行年】「こうねん」とも。死んだ人が生きてきた年数。「―七十五歳」

「享年」と同じという部分はおおむね一致しているですが、大きく分かれるのは、生きている人の年の意味があるかどうかです。昔の用例を見る限りでは、本来は生死に関係なく単に年齢の意味で使ったという気がします。しかし現代での使い方は死亡時の年の意味が大半でしょう。「行く」があの世に「逝く」の意味と解釈され、死者について用いられるようになったのかもしれません。

ただし「享年」という同義語がある以上、生者にも使われた「行年」をわざわざ用いることもないとも思えます。「行年」という言葉自体、去っていく流れにあるのかもしれません。


正解
早世そうせい 84%
さっせい 8%
そうせ 8%
似たことは「早世」にもいえます。字面だけでは意味がわかりにくいのではないでしょうか。「早逝」という熟語は採用していない辞書もあるので今のところ「早世」を新聞でも用いていますが、いずれ「早逝」が主流にならないとも限りません。


正解
命冥加いのちみょうが 70%
めいみょうが 25%
いのちめいが 5%
蓋棺がいかん 84%
のうかん 8%
じんかん 8%
「命冥加」「蓋棺」は一般的な言葉ではありませんが、それにしては比較的高めの正解率でした。

最後に中西進「ひらがなでよめばわかる日本語」(新潮文庫)から引用しましょう。
「ひつぎ」も、二つのことばからできています。霊力、霊格、霊魂を表わす「ひ」と、継続を表わす「つぎ」。つまり「霊魂を継ぐもの」が「棺」です。(中略)肉体は死んでも魂は死なないで、永遠に継がれていく。「ひつぎ」というのは、その魂を継ぐために入れておく、いわば受け皿としての器です。
その後に中西さんは「とてもすてきな詩」としてイタリアの詩人・ウンガレッティの「宇宙」の訳を紹介します。
海とともに
ぼくは
まあたらしい
棺になった
中西さんは「まあたらしい棺」は「第二の生の象徴」と解きます。この詩が、津波によって大切な人を奪われた方々の悲しみを、ほんの少しでも癒やすことになれば幸いです。
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