スマートフォンと聞いて、何のことだかさっぱり分からないという人はかなり減ったのではないでしょうか。毎日新聞ではこれまで、後ろに日本語を補って「スマートフォン(多機能携帯電話)」とすることが多かったのですが、この表記もいつの間にか、あまり見かけなくなりました。


なじみの薄い外来語に日本語の説明を補うことは新聞ではよくありますが、その一つ一つが厳密にルール化されるわけではありません。「多機能携帯電話」という言葉も、記者間の了解に基づいて自然と使われ出し、時間の経過とともにまた自然と使われなくなったものです。この「自然と」が世間の理解度とうまくリンクしているかどうかは、新聞が読者目線に立てているかどうかに大きく関わってくるともいえますが、恥ずかしながらその点については今まであまり意識してこなかったように思います。


試しに「スマートフォン」という語を含む記事のうち、その説明に「多機能携帯電話」という言葉が使われた記事の割合を年ごとに調べてみました(毎日新聞東京本社最終版。地域面と社告は除く)。すると、2011年には63.6%だったものが12年には57.8%、13年には42.5%と徐々に減っていき、14年には9.1%と急減していました。15年は1.0%と、ほとんど使われなくなっています。


総務省の通信利用動向調査によると、スマホの世帯保有率は13年までに急増し、同年末時点で62.6%に達しました。その後は14年末に64.2%と、頭打ちの傾向が見られます(15年末の数字は未発表)。13年までにスマホが広く普及した結果、14年から「多機能携帯電話」の説明を省く傾向が顕著になったと考えると、この件に関しては世間の動向を比較的きれいに反映しているといえそうです。誰が指揮を執っているわけでもないのに、新聞とはよくできているものです。いや、人ごとではいけないのですが……。


今は新しいカタカナ言葉があふれる時代。この「リンク」がうまくいかず、読者から不親切との指摘を頂くことも少なくありません。スマホの例についても、6割で普及といえるか、「多機能携帯電話」という言葉は適切かなど、さまざま議論の余地があるでしょう。最初の読者といわれる校閲記者として、誤字脱字とはまた違ったこのような点にも、常に敏感でいなければと思っています。
【植松厚太郎】

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