日々の作業の中で、本来とは違う意味合いや、辞書ではあまり見つからない言葉遣いに出合って、立ち止まることは少なくありません。

そんな“気になる表現”のうち、しばしば見かけるケースへの対応や考え方について、マスコミ各社の用語担当者が参加する日本新聞協会用語懇談会に報告されたアンケート(毎日新聞大阪本社が関西地区で幹事社として主導)をまとめました。

これらの扱いは、用語基準としては決められていないものも多く、社内でも担当者によって意見が分かれたというケースが少なくなかったようです。そのため、回答は各社の公式見解ではありませんが、考え方の傾向はうかがえます。

あなたならどう感じるでしょうか。ぜひ一緒に考えてみてください。

2014年秋のアンケートから。回答したのは21社(全国紙・通信社7、スポーツ紙3、テレビ局5、地方紙6)の用語担当者。どちらとも言えないとした場合は0.5ずつカウントした。話し言葉や寄稿文、引用などの場合は除く。

鬼門

例文
今大会もまた悲願の決勝進出は成らなかった。同校にとって、準決勝が鬼門となっている。
直す=14社
直さない=7社
この場合の「鬼門」は「壁」などに直す、という声が多かった。鬼門は「苦手で避けたいものであるので、不自然」という意見のほか、「場所、方角のみで使用する」「元々呪術的意味で、スポーツと結びつけたくない」との声も。

一方で「辞書でも場所だけでなく相手や事柄など幅広い物への苦手意識としていて、違和感を覚えない」などとし、直さないとする声も3分の1を占めた。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
「その人にとって苦手で避けたい人や場所、事柄」


匹敵

例文
都議会でのセクハラやじは議員辞職に十分匹敵する。
直す=19.5社 
直さない=1.5社
ほとんどは、この「匹敵する」を「値する」「相当する」に直すとした。理由としては「『匹敵』は『程度が同じぐらい』のものを比較する語のため」などが挙がった。

しかし、「価値が同程度という本来の意味からさほど外れているとも思えず、迷う」「許容範囲と考える」という意見も少数ながらあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
「価値や能力などが同程度である」


かざす

例文
バーコードリーダーを商品にかざして値段を読み取る光景も、今ではごく当たり前となった。
直す=6.5社
直さない=14.5社
多数派だった「直さない」の理由としては、「手をストーブにかざす」と同様だという見方が複数あったほか、本来の使い方からそう外れていないという意見や、言い換えが見つからないという声もあった。

しかし違和感の表明も一定数あり、「直す」とする意見では直し方の例として「当てて」や、「バーコードリーダーで商品の値段を」などを挙げた。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
「頭上や顔の前を手や物で覆って光を遮る。熱や光が当たるよう手などを差し出す」


大食漢

例文
大食漢の女性タレントが各テレビ局から引っ張りだこだ。
直す=20.5社
直さない=0.5社
「漢」は「男」を表す漢字であり、女性には使わないという意見が圧倒的だった。直し方としては「大食」「大食い」が多かったが、「品がないので健啖(けんたん)家が無難」という意見も。

一方で「痴漢や門外漢なども、今や男女問わず用いている」と例文の使い方を許容する声があったが、「同じ『漢』でも、『大食漢』は許容しても、例えば『暴漢』なら?と考えるとなかなか難しい」とコメントが続いた。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
「おおぐらいの男」


ひもとく

例文
17年間にわたる平田容疑者の逃亡生活の様子が徐々にひもとかれてきた。
直す=20社
直さない=1社
「ひもとく」は「解き明かす」などの意味合いに使われるケースが多くなっているものの、その意味を採用している辞書はまだ少ない。「歴史をひもとく」などという形だったら多少は違う結果になったかもしれないが、今回の例文では許容範囲としたのは1社だけだった。直し方は「明らかになってきた」「分かってきた」「解明されてきた」など。

中には「『ひもとく』を『解明する』意味では使わないことをはっきり決めており、『参照する』と置き換えて違和感があるものは直す」という社もあった。

辞書に掲載されている一般的な意味の例
「書物を開いて読む」
(②へ続く)
〈直す? 直さない? マスコミの用語担当者が気になる表現〉 他の記事はこちら
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