敬老の日に100歳の方に贈呈される銀杯についての記事で「銀メッキ」という表記を用いたところ、読者の方から「メッキ」は外来語ではないのだから平仮名書きにすべきでは、とのご指摘をいただきました。


「メッキ」はかなり古い時代から使われている日本語で、漢字では「滅金」や「鍍金」と書きます。毎日新聞は国で定めた常用漢字表を紙面製作の際に使用する漢字の範囲の目安としていますが、その常用漢字表は「金」に「き」という読みを認めていませんし、「鍍」はそもそも常用漢字表にありません。ですから、別の表記・表現をするか、仮名書きにすることになります。漢字書きができる言葉は、「かるた(歌留多、骨牌など)」や「かっぱ(合羽)」などのように西欧語由来の外来語であってもほぼ日本語化しているため、仮名書きにするときは片仮名ではなく平仮名書きとすることが多いです。メッキについても「めっき」と平仮名で書くこともあります。

毎日新聞用語集ではメッキについて「(鍍金、滅金)→めっき、メッキ」としており、平仮名、片仮名両方の表記を認めています。これは、通信社や放送局も加盟している日本新聞協会の組織である用語懇談会で合意された同協会の新聞用語集でも同じ規定となっており、新聞社の多くが同様の規定となっています。

もともと同協会の用語集は平仮名の「めっき」の表記だけを採用していました。しかし、平仮名書きの「めっき」はあまり定着せず、一般には「メッキ」という片仮名の表記が行われることが多かったため、同協会の用語集は2007年の改訂で片仮名の表記も採用しました。これは平仮名表記が記事の中で埋没して読みにくくなることが多いのと、専門分野の化学工業などの業界でも片仮名表記が一定程度行われていたことなどが理由だと思います。文部科学省が学術用語の整理統一のために作った「学術用語集」では「メッキ」「めっき」両方が登場していますが、「メッキ」が大きく関わると思われる「採鉱ヤ金学編」では、私が見た限りほぼ「メッキ」と片仮名にしています。

こうした状況ですので、一般の辞書も「ふつうメッキと書く」(広辞苑第6版)、「『メッキ』と書くことが多い」(明鏡国語辞典)などと片仮名を認める方向にあります。毎日新聞の紙面でも、平仮名書きも登場するとはいえ、ほぼ1対19の割合で片仮名が優勢です。変化していく言葉の一例だと思います。
【松居秀記】
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