〈読めますか?〉結果

この週は「戦中戦後のキーマン」。戦後70年にちなむ言葉を続けてきましたが、今回で一応ひと区切りです。

正解
幣原喜重郎しではらきじゅうろう 80%
ぬさはらきじゅうろう 11%
へいばらきじゅうろう 10%
杉原千畝すぎはらちうね 78%
すぎわらちうね 16%
すぎわらせんぽ 5%
米内光政よないみつまさ 64%
よねうちみつまさ 30%
べないみつまさ 6%
阿南惟幾あなみこれちか 94%
あなみただかず 3%
あなんゆいき 2%
重光葵しげみつまもる 48%
しげみつあおい 49%
じゅうこうあおい 3%

普段この文章の原稿はATOKで入力しているのですが、この5人の中で「あなみこれちか」だけが一発変換しませんでした。また「阿南惟幾」は広辞苑に載っていませんでした。気になって、固有名詞を載せる方針の辞書を引き比べ、採用状況を表にしてみました。

調査対象は、広辞苑(第6版、岩波書店、2008年)大辞林(第3版、三省堂、06年)大辞泉(第2版、小学館、12年)集英社国語辞典(第3版、12年)日本国語大辞典(第2版、小学館、00~02年)。一部デジタル版では入っているのもありますが、紙の辞書限定の比較です。

広辞苑大辞林大辞泉集英社日 国
幣原喜重郎
杉原千畝
米内光政
阿南惟幾
重光葵

「阿南惟幾」を採録しているのは大辞林だけなんですね。この人は幣原喜重郎、米内光政と比べると首相になっていないので外れるのでしょうか。しかし重光葵も首相経験者ではありません。なぜほとんどが採用しないのか分かりませんが、それはともかく「阿南惟幾」は難読と思われる割に正解率が高くなりました。知らなくても一番それっぽいと思った選択肢が当たった人もいるでしょうが、やはり公開中の映画「日本のいちばん長い日」の影響が大きいかもしれません。

「杉原千畝」は広辞苑だけが採録していました。これも少し意外です。1986年没、91年に名誉回復ということですので、他の人に比べ辞書に載せるにはまだ歴史が浅いということでしょうか。しかし「安倍晋三」など存命中の人物も載っている大辞泉でさえ杉原千畝を採っていません。きのうの毎日新聞夕刊でも、リトアニアでこの名を刻んだプレートの除幕式があったという記事が載りました。また12月には映画「杉原千畝」の公開を控えています。現在、ネームバリューは十分だと思います。しかし採用しない辞書を非難する資格はないかもしれません。というのも毎日新聞には見出しで「杉浦千畝」と間違ってしまった「前科」があるからです……。

幣原喜重郎も杉原千畝、重光葵と同じく外交官。2009年度大学入試センター試験日本史Bの問題テーマになっています。いくつかありますが、一つ引用しましょう。
幣原が外務大臣として推進した外交政策について述べた文として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。

① 米・英との協調のため,南満州鉄道株式会社の解散を決定した。
② 中国国民革命軍の北伐に対抗して,山東半島に出兵した。
③ 日ソ基本条約を締結し,ソ連との間に国交を樹立した。
④ 東アジアの結束を誇示するため大東亜会議を開催した。
いかがでしょう。高校で日本史を選択しなかった漢字クイズ出題者としてはけっこう難しいと思います。しかし軍縮を目指した「幣原外交」がなぜ挫折し、軍部の増長をなぜ止められなかったかは、日本史選択いかんにかかわらず日本人として知っていなければならないと思います。

終戦ものや美談ものの映画もたいへん結構ですが、なぜ戦争を止められなかったかを、たとえば幣原喜重郎や米内光政などを通して考えさせる映画やドラマがつくられてもいいのではないでしょうか。なお先ほどのセンター試験の問題の正解は③です。
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