〈読めますか?〉結果

この週は「忠告」がテーマでしたが、二転三転しぎりぎりまで選定に悩んだ週でした。たまにはどうやって決めているかという悪戦苦闘の過程を紹介しましょう。


まず出題の週にどんな年中行事や記念日があるか、共同通信社発行の「共同通信ニュース予定2015」やインターネットなどで調べます。9月半ばには敬老の日、秋分の日などの休日があるのですが9月初めは特に大きなイベントなどはありません。歳時記もよくネタ元にしますが、まだ秋になりきっていない時期なので秋の季語ももう少し後の方がいいかも。台風シーズンですが風の関連語は今までも何度かやってきて、風の語彙が豊富な日本語といえどもさすがに新たに五つ探すのは難しい。
共同通信ニュース予定2015
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そこで最近のニュースから考えます。ちょうど五輪エンブレムが話題になっていたので「模倣」「酷似」などのテーマはどうか。しかし類語の難読語が五つも集まりそうにないうえ、たとえば「剽窃」などを出題するのは、デザイナー側が否定しているのでいかがなものかと思いました。その他、五輪問題にからんではいろいろ考えましたが、いずれも納得がいきません。

そこで自民党総裁選が無投票に終わりそうだったこともあり「今の自民党には首相を諫める人はいない」という声がしばしば聞かれることから、「諫める」というテーマではどうかと思いました。

当初「諫める」の語でも出題しかけたのですが、既出だったことが同僚の指摘で分かり、急きょ「諫言」に変えました。長く続けていると自分で出題した語も忘れていることがあります。ちなみに「諫言耳が痛い」というのはアニメ「風の谷のナウシカ」でクシャナがユパに言ったせりふに出てきました。クシャナというのは大国の若い姫で、ユパは年配の名剣士。ユパはクシャナの臣下ではありませんが、「(ユパの)諫言」が「(クシャナの)耳が痛い」という言葉からは、クシャナの意識における上下関係がうかがえます。なぜなら「いさめる」もそうですが、「諫言」は上位の者に意見する言葉として使われるからです。
正解
諫言かんげん 77%
ざんげん 14%
とうげん 9%
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「面を冒す」というのは実は「毎日新聞用語集」の「おかす」の漢字の使い分け例の一つとして載っています。初め見たときは何と読むのか分からなかったので、いつか当漢字クイズにと思っていました。今回の正解率は予想より良いので、意外に知られた言葉なのでしょうか。
正解
面を冒すおもてをおかす 67%
めんをおかす 27%
つらをおかす 6%
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「耳に払らう」も3択のうちの消去の結果かもしれませんが、今はまれな表記の割に読めています。このネタ元は「楽しく使える故事熟語」(文春文庫)で、さらにその由来は「韓非子」。もちろん原典がどうあれ今は「耳に逆らう」と書いても問題ありません。
正解
耳に払らうみみにさからう 60%
みみにさすらう 22%
みみにはらう 17%
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「雖も」は偶然「故事・俗信ことわざ大辞典」(小学館)の「国」の項を見て「国大なりと雖も戦いを好めば必ず滅ぶ」という言葉に合い、「おお、安倍首相の好きな『千万人と雖も吾ゆかん』に対置するにぴったりの名言だ」と思いました。発表後、個人のブログで「あまりにも時期と意味がピッタリなので思わず笑って仕舞った」という反応を頂きました。
正解
雖もいえども 64%
あたかも 34%
たれも 3%
故事俗信 ことわざ大辞典 第二版

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「頂門の一針」が今回最も低い数字になるとは思ってもいませんでした。最も素直な読みのはずですが、この言葉があまり知られていないことと、「ちょうもんのいっしん」では簡単すぎるので違う選択肢を選んだ人が多いことによる結果と思われます。
正解
頂門の一針ちょうもんのいっしん 57%
ちょうもんのひとはり 26%
ていもんのいっしん 17%

「頂門の一針」も「耳に払らう」も「はり」が関連する言葉。「はり」は一時的に痛くても体を治癒します。このように、組織のトップには耳に痛い忠言こそが必要ということで「忠告」というテーマに落ち着いたのです。苦労した分、それなりに達成感もあった週でした。
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