〈読めますか?〉結果

この週は「終戦の詔書」でした。「終戦の詔勅」という言い方もよくします。「詔勅」は「詔書」の他に「勅書」「勅語」を含んだ、天皇の命令・意思を伝える文書の総称だそうです。だからどちらでも間違いではありません。

「終戦の詔書」御署名原本=国立公文書館サイトから

それにしても難読語の多いこと。今の新聞などの日本語とは異質です。玉音放送を実際に聞いた人々もほとんどが何のことだか分からなかったと口をそろえます。ただし、読みも意味も分からない漢語はそれほど多くありません。今はふつう平仮名、あるいはもっと易しい漢字で書くものが多いことが読みにくくしているのであり、漢文の素養があれば見た目ほど難しくない文章といえるかもしれません。(宮内庁サイトのPDF版はこちら


正解
五内ごだい 74%
ごのうち 16%
いつうち 10%
今回の出題中「五内」は言葉自体なじみがないと思います。「五つの内臓、つまり五臓六腑(ろっぷ)の五臓と同じこと」と説明されないと、何のことやらさっぱりですね。それなのに正解率は最も高くなりました。これは「ごない」が選択肢になかったことが理由の一つと考えられます。「日本国語大辞典」(小学館)は空見出しとして「ごない」も掲げているから外したのです。また「内」を「だい」と読ませるのは「内裏」「参内」など天皇関係では珍しくないことも選択を容易にしたのでしょう。


正解
茲にここに 61%
まさに 23%
ただちに 16%
抑々そもそも 64%
やや 30%
しもじも 6%
爾臣民なんじしんみん 51%
じしんみん 29%
わがしんみん 21%
その他はいずれも表記として難しいのであり、意味としては説明不要でしょう。「茲に」「抑々」は漢文の訓読として「ここに」「そもそも」と読ませますが、今は新聞だけではなく一般的にも平仮名。「なんじ」はこの言葉自体、現代語とはいえませんが漢字なら「爾」ではなく「汝」の方をよく見ます。


正解
趨くおもむく 33%
あまねく 55%
とどく 12%
「おもむく」は新聞用語では「赴く」で、他に「趣く」という表記もありますが、常用漢字表は名詞の「趣=おもむき」は認めても動詞は認めていません。今回最も正解率が低くなった「趨く」は手近の国語辞典を調べた中では「大辞林」「学研国語大辞典」「講談社カラー版日本語大辞典」にしか見つかりませんでした。「堪え難きを堪え忍び難きを忍び」というあまりにも有名なフレーズに直結する文言でありながら「趨く」を採用していない辞書が多いということは、特殊な用字であることをうかがわせます。

半藤一利著「決定版 日本のいちばん長い日」(文春文庫)によると、閣議に提出された詔書案ではここは「義命の存する所」でした。「難解であるという理由」により「時運の趨く所」に変わったそうです。
決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)
半藤 一利
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同書でその前の起草段階のところの「注」の中に「校閲」という言葉があるのが職業上目につきました。
開戦の詔書には文法的な誤りがあったということで、一層慎重を期し、漢学者川田瑞穂、安岡正篤の両氏が、用語、表現について協力した。(中略)ふたたび安岡正篤氏の校閲を経て、完成した
しかし閣議での修正案を改めて専門家が「校閲」したという記述は少なくとも同書にはありません。時間的に無理だったことがうかがわれます。ということは「趨く」という表記は、良くもあしくも、いわば「校閲を通さない」まま出た可能性があります。

いや、だからこの字が不適切というつもりはありません。まさか「趣く」の誤字だったわけでもないでしょう。ただその例とは離れて一般論としていうと、締め切り直前に修正を加えたところでは十分なチェックが働きにくいことを、校閲として身にしみているから気になったまでです。

第三者のチェック機能は、文章であれ国家の政策であれ、絶対に外してはならないと思います。

  戦後70年に当たり公開された玉音放送の原盤の音声

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