漢字クイズ(テーマ・原爆)結果

回答割合は次の通り(出題日は8月3~7日、★が正解)。

原子野げんしの9%げんしや★77%ばるこの14%
灰白色かいはくしょく★69%はいじろいろ3%はいはくしょく28%
陶冶とうじ16%とうち11%とうや★72%
朝に紅顔あさにべにがお21%あしたにこうがん★73%ちょうにこうがん7%
被服支廠ひふくししょう★71%ひふくしちゅう10%ひふくしちょう19%

この週は「原爆」をテーマにした著名な本から選びました。

原爆投下後の長崎・浦上天主堂付近
「原子野」は永井隆「長崎の鐘」(1949年刊)から。当然、原爆被災後に生まれた言葉でしょう。永井博士が最初に使った可能性は高いと思いますが、確言はできません。一般的な語ではありませんが、昨年も「原子野のトラウマ」という本が出版されるなど、少なくとも65年の歴史のある言葉です。「デジタル大辞泉」には載りましたが、そろそろ紙の本にも載せてほしい言葉です。
長崎の鐘 (アルバ文庫)
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永井 隆
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「灰白色」は「長崎の鐘」に言及した文章も残している原民喜の代表作「夏の花」(47年発表)から。正解率69%と数字そのものは悪くはないのですが、今回最も低い正解率になりました。「灰」を音読み「カイ」にするか訓読み「はい」にするかは一筋縄ではいきません。火山のニュースでよく出る「降灰」は本来「こうかい」でしょうが「こうはい」も辞書はおおむね認めています。「骨灰」という語は「骨が焼けて灰になったもの」の意味では「こつばい」、「散々な目に遭うこと」の意では「こっぱい」、「獣骨からにかわなどを採取した後、焼いて骨にしたもの」は「こっかい」と辞書にあります。

なお、広島市などは「夏の花」の基になった手帳などをユネスコの世界記憶遺産に登録申請しています。「この辺の印象は、どうも片仮名で書きなぐる方が応(ふさ)わしいようだ」と断って書いた「灰白色ノ燃エガラ」「パット剥ギトッテシマッタ アトノセカイ」などの詩のような部分が、手帳の記述に既にあるのかどうか気になります。
夏の花 (集英社文庫)
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原 民喜
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「陶冶」は「原爆の子―広島の少年少女のうったえ」(51年刊)の編者・長田新による序文から。このいささか長い序文には、本編に収録できなかった子供の手記も部分的に多数が引用されていますが、その一つに「中沢啓治」の名が見えます。言わずと知れた「はだしのゲン」の作者で、当時小学校1年だった被爆直前の部分が引いてあります。
学校につくと、きゅうに思い出した。わすれ物をしたのだ。ぼくは早速家に帰ろうと思い、学校の裏口まで来た時、一人のおばあさんが、ぼくにたずねた。ぼくはそのおばあさんと色々話をしていると
後年、毎日新聞の取材に応えて中沢さんは「あの時、僕の網膜に焼き付いたものそのままを描いたら、みんな卒倒するんじゃないか」と言っています。

「朝に紅顔」はその「はだしのゲン」から。ゲンは被爆直後に生まれた妹のミルクのために、お礼目当てにお経を覚えます。そのかいもなく妹は死んでしまい、「わしゃ友子にお経をあげるつもりでならったんじゃないわい」と泣きながら「朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身」などのお経を唱えます。この漫画で最も泣けるシーンではないでしょうか。
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中沢 啓治
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この「白骨の御文章」(「御文(おふみ)」ともいいます)は、井伏鱒二「黒い雨」(66年刊)でも主人公が被爆後、覚えて死者の供養をします。なお「あさ」の意味で「あした」というのは「浜辺の歌」の「あした浜辺をさまよえば」で有名だと思います。

「被服支廠」に関しては細かいことですが、いかにも校閲らしいところを述べさせていただきます。この「廠」の字は毎日新聞紙上では「尚」の部分の上が「小」の字体(右)を使っているのですが、電子媒体では表示が難しく、ここでは「尚」の字体で代用しました。「支廠」「被服支廠」は大きめの国語辞典でも見つかりませんが、「廠」の字は「工廠」などの語で載っています。毎日新聞と同じく「尚」の部分の上が「小」の字体で載せる辞書がほとんどですが、「大辞泉」第2版は中が「尚」の字体です。この辞書は他にもこのような新字体ふうの字が目立ち、異色の字体方針を取っているようです。それはともかく、「黒い雨」にも登場し、現在も残るのが広島市の被爆建物、旧陸軍被服支廠。個人的には高校時代、毎日その脇を通っていたこともあり、いつまでも残ってほしい遺構です。
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