ここ数カ月、毎日のように「ギリシャ問題」が紙面を騒がせている。「債務危機」に陥ったギリシャは、財政破綻しユーロ圏から離脱しかねないという欧州分裂の危機にあった。その後EUなどの債権団と歩み寄り、財政改革を実施することを条件に金融支援交渉を始め、ギリシャ発の「ユーロ危機」は解決に向かいつつある。


この欧州単一通貨「ユーロ」と欧州の地域統合体「EU」。実は、EU諸国全てが自国通貨にユーロを採用しているわけではない。ユーロは、EUに加盟する28カ国のうち、19カ国で使われている。さらに、国土面積が世界最小の国「バチカン」をはじめ、EUに参加していない6カ国でもユーロが使われている。

「ユーロ≠EU」で、以前アイルランドに旅行した時のことを思い出した。アイルランドは、英国の西に浮かぶ島国。一方、英国の正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」で、アイルランド島の北部も英国の一部だ。アイルランドも英国も欧州連合(EU)に加盟しているため、その違いはさほど気にしていなかったのだが、意外な落とし穴があった。


アイルランドの通貨はユーロだが、英国はポンドを採用しているため、北アイルランドの通貨もポンドだ。アイルランドの首都ダブリンから鉄道で北アイルランドのベルファストに日帰り旅行をしたのだが、到着して最初にやることは、英国通貨ポンドへの両替だ。ちなみに、硬貨はロンドンなどで使われているものとデザインが同じだが、紙幣はアイルランドのオリジナルデザイン。その後、タイタニック号が出航前に係留されていたドックを見に行ったり、フィッシュ・アンド・チップスを食べたりと「英国旅行」を満喫して、ダブリンに帰ろうとしたときに問題発生!


行きと同額のユーロの運賃を用意し、窓口で切符を購入しようとしたが「ここは英国、ポンドで払ってくれ」と断られたのだ。また英国に来るかどうか分からないのでポンドは使い切っていた。しかも、両替は受け付けてもらえなかった。幸いクレジットカードを持っていたので、ポンドで支払い無事終電には間に合った! それにしても往復するだけなのに行きと帰りで通貨が違うとは。


余談だが、10年ほど前にイタリアの南に位置するマルタ共和国に旅行したときのこと。タイムスリップしたかのような古代遺跡や中世のお城の美しさが忘れられず、昨年再訪した。しかし、マルタの通貨「マルタリラ」は、2008年にユーロに切り替わっており、残っていたマルタリラは使えなかった。残念だったが、二度と手に入らないので、思い出にと大事に保存している。

私の「ユーロ危機」はかわいいものだったが、一筋縄ではいかないユーロには、今後も注視したい。
【大野境子】

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