漢字クイズ(テーマ・辞書編者)結果

回答割合は次の通り(出題日は5月25~29日、★が正解)。
新村出あらむらいずる3%しんむらいずる★29%にいむらいずる68%
大野晋おおのしん14%おおのすすむ★78%おおのひろし8%
松井栄一まついしげかず★38%まついてるいち18%まついひでかず44%
上田万年うえだかずとし★55%うえだかめとし27%うえだばんねん18%
見坊豪紀けんぼうごうき27%けんぼうたけのり46%けんぼうひでとし★27%

この週は「辞書編者」。5月25日が広辞苑初版発行60周年の日であることから設定したテーマです。


広辞苑は毎日新聞東京本社校閲職場に14冊もあり、他の辞書を圧倒しています。個人で持つ電子辞書の広辞苑も含め、仕事で広辞苑のお世話にならない日はないと断言できます。一般の人にとっても、広辞苑のブランドは知れ渡っていると思われます。

しかし、実は新聞校閲初心者にとって必ずしも使いやすい辞書とはいえません。例えば新聞では基本的に常用漢字表にのっとっていて、それ以外の漢字は言い換えを提案したりルビを付けたりしているのですが、広辞苑の見出し語では常用漢字表内字かそうでないかの区別がつきません。大辞林、大辞泉や多くの小型国語辞典では、小さい「×」など何らかの記号が付いているのでそれらは常用漢字表にはないと分かります。

もっとも、一般的な利用者にとってはそれは大した欠点ではないでしょう。他にも広辞苑には仕事上の不満はあるのですが、それでも職場にたくさん備わっているというのはステータスの表れです。原稿で何か直したいことがあって出稿元と協議したいとき「広辞苑に書いてある」「広辞苑にもない」というのは説得材料の一つになるのです。また、日本新聞協会用語懇談会の専門委員を務めた金武伸弥さんの「『広辞苑』は信頼できるか――国語辞典100項目チェックランキング」(講談社)は、刺激的なタイトルですが、広辞苑に対し20の辞書のうち4位と高い評価をしています。

さて、よく利用されている広辞苑ですが、その表紙などに印刷されている「新村出」の字は目にしても、その読みは半数以上が分かっていないことが今回明らかになりました。

この週で最も正解率が低かったのは「見坊豪紀」です。前述の「『広辞苑』は信頼できるか」のランキングで1位に輝いた「三省堂国語辞典」の編者としてその筋では有名で、NHKの「ケンボー先生と山田先生」というドキュメンタリーで取り上げられたり本になったりしたのですが、やはり名前は難読でした。ちなみに「『広辞苑』は信頼できるか」にはこうあります。
新聞・出版界など辞書をよく利用する人たちの間には、「『広辞苑』にない言葉は『三国』(三省堂国語辞典)を引けばある」という話が冗談まじりに交わされている
「知ってか知らでか」のように、どの辞書も採用していない語句が入っている
次に「松井栄一」さん。今回の5人のうちただ一人ご健在です。目もくらむような大辞典である「日本国語大辞典」(小学館)に第1版、第2版とも中心となって携わった方。念のためいえば、同辞典はいま日本で唯一の大型国語辞典であり、広辞苑、大辞林、大辞泉は「中型国語辞典」という位置づけです。なお第1版の編集顧問に「新村出」、編集委員に「見坊豪紀」の名があります。

日本国語大辞典の母体になったのが「大日本国語辞典」(大の位置が変わっただけですね)。これは今回出題した「上田万年」と、松井栄一さんの祖父「松井簡治」の共著となっています。しかし松井栄一さんの「出逢った日本語・50万語――辞書作り三代の軌跡」(ちくま文庫)所収の「松井簡治と『大日本国語辞典』」には上田万年のことは一言も触れられていません。もしかしたら上田万年は名前を貸しただけなのでしょうか。それはともかく、上田万年は国語学を少しでもかじったら必ず目にする名前と思います。

それにしても国語学者には難読の名前が多いですね。「大野晋」さんは最も読めていますが、ベストセラーも出し、マスコミにたびたび出た有名人だからでしょう。「晋」は安倍晋三首相など「しん」が多いので、読みそのものは易しいとはいえないはず。そのほか「新明解国語辞典」を作った山田忠雄の父「山田孝雄(よしお)」、「時枝文法」で知られる「時枝誠記(もとき)」も、読みを知って「そうだったのか」と驚いた名前です。

広辞苑に話を戻すと、以上の人名のうち時枝誠記、山田孝雄、上田万年、松井簡治は引けば出てきます。「新村出」は見出し語にはありませんが、奥付に略歴として出ていました。見坊豪紀(1992年没)らはまだ最新の第6版(2008年)には載っていません。今後の改版で載ると思いますが、いずれにせよいつまでも紙の辞書が存続してほしいと願っています。
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