漢字クイズ(テーマ・吉凶)結果

この週は「吉凶」がテーマでした。

難読字は無限にあるのですが、季節に合わせた漢字を重複なく出題しようとすると、年をかさねるごとに選定に苦労してきます。この週は恵方巻き→方角→鬼門という連想をしているうちに、奈良で「卜骨」が見つかったというニュースが飛び込んできて「吉凶」がテーマに決まりました。

回答割合は次の通り(出題日は2月2~6日、★が正解)。
方違えかたたがえ★85%ほうたがえ12%ほうちがえ3%
うしとら★80%うん12%わる8%
橋占きょうせん33%はしうら★45%はしじめ22%
御神渡りおみわたり★92%おんがみわたり5%ごじんわたり3%
卜骨うらぼね44%とこつ4%ぼっこつ★52%

ただ、卜骨発見の記事は日本人人質事件に紙面が圧迫されたせいか東京本社発行の毎日新聞には掲載されませんでした。そのせいとは思いませんが、「卜骨」の正解率はあまりよくありませんでした。

by KENPEI
今回最も正解率が低かったのは「橋占」です。京都の一条戻橋は橋占の名所。安倍晴明が使役した式神を隠していたという伝説や、死者が一時よみがえったという話が残っています。余談ですが往年のNHKドラマ「もどり橋」(脚本は故・市川森一さん)は良かったなあ。

最も正解率が高かったのは「御神渡り」。信州では名高いと思われますが、全国的にも知られているのでしょうか。諏訪湖の御神渡りは今冬も結局出現しないまま終わりそうで、関係者はがっかりしているそうです。でも御神渡りがなかったことを指す「明けの海」という言葉もなかなかすてきと思いませんか。

次によく読めたのは「方違え」。出題時の解説で「平安時代」と書きましたが、やや不正確でした。どうやら明治初めまで一部で続いていたようです。しかし平安時代最も盛んに行われていたのは間違いありません。

「艮」は「うしとら」と読めば凶の方角ですが、音読み「ごん」はなぜか人名に用いられました。幕末の学者、安積艮斎(あさか・ごんさい)はご存じでしょうか。本人は有名でなくても門人は驚くほど多士済々です。吉田松陰、高杉晋作、楫取素彦、秋月悌次郎など、幕末ものの大河ドラマで最近出ている名前がぞろぞろ。そして福地源一郎の名も。つい先日5万号を達成した毎日新聞の前身、東京日日新聞の主筆だった「福地桜痴」その人です。

吉田松陰といえば、先週の安倍晋三首相の施政方針演説では「吉田松陰先生」と「先生」が付いていました。岡倉天心、岩倉具視は呼び捨てでしたが……。しかし「吉田松陰先生の言葉」として述べた「知と行は二つにして一つ」は、中国・明の王陽明の唱えた「知行合一」を下敷きにしています。松陰のオリジナルとはいえません。引用の後で安倍首相は「この国会に求められていることは、単なる批判の応酬ではありません。『行動』です」と野党の批判をけん制しました。批判を「知」と同列に述べていることも奇妙ですが、王陽明が「知は行の始め」と言うように、知らなければ行うこともできません。松陰も「講孟箚記(さっき)」で「知を以て先とせざることを得ず」と述べています(講談社学術文庫)。「行」のみに重点を置くのでは「二つにして一つ」の言葉と矛盾し、せっかく「先生」とまで呼び尊敬の念を表しても、その言葉を大事にしていないことになるのではないでしょうか。

ところで、安倍首相の演説をはじめ多くの人が「邦人殺害」と言っていますが、誰も後藤健二さん、湯川遥菜さんの遺体を確認していないはずですよね。一方的な映像があるだけなのになぜ殺害と断言できるのでしょう。戻橋の伝説ではあるまいし、生き返ってくると本気で思っているわけではありませんが、せめてもう少し待って「殺害」とすべきではないでしょうか。なお毎日新聞では基本的に「日本人人質事件」とし、「殺害」はカギカッコに入れるなどして事実と断定しない書き方をしています。

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