漢字クイズ(テーマ・羊を含む字)結果

この週は今年のえとにちなみ「羊を含む字」でした。「羊」の字を使う熟語はそれなりにありますが、難読語はそれほど多くはないようです。今回出題した「羊歯」「羊羹」も、かなり高い正解率になりましたが、ある程度予想できました。ですから羊の字自体ではなく、「羊」を構成要素として持つ字も加えました。

回答割合は次の通り(出題日は1月5~9日、★が正解)。
四分儀しぶぎ10%しぶんぎ★83%よんぷんぎ7%
達磨市たつまし5%だるまいち★81%だるまし14%
羊歯しだ★91%やつで6%よし3%
羊羹なます0%かるかん1%ようかん★99%
羞悪がんあく5%しゅうあく48%しゅうお★48%

by アリオト
まず「四分儀」。「儀」のつくりの「義」の字は、いけにえの羊をのこぎりで切り神にささげることから、神意にかなう、正しいという意味になったという説が有力のようです。四分儀は「象限儀」という場合の方が多いのですが、現物は例えば国宝を千葉県香取市の伊能忠敬記念館が所蔵しています。

「達磨市」の「達」については「白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい」(小山鉄郎、共同通信社)から引用しましょう。しんにょう以外は「子羊が生まれ落ちる姿を後ろから見た形を文字化しています」。「とどこおりなくとおることから『とおる、およぶ』などの意味となりました」。達磨さんはインド出身の人なのでこの字は当て字なのですが、その人形が今でも人気なのは、一つには七転び八起きの象徴としてですが、もう一つには達の字の意味がいいからかもしれません。「とおる」という意味は受験生にもありがたがられますし。

今回最も正解率が低かったのは「羞悪」。「孟子」に出てきます。羞の字(羊+丑)が「はじる」の意味となった理由について、「漢字ときあかし辞典」(円満字二郎、研究社)には「部首『羊』が付いているのは、本来は“羊の肉をお供えする”ことを表していたから。“はじる”という意味が生まれた経緯ははっきりしないが、“細く絞った羊の肉”という意味があるという説は、“心が縮こまる”との関係で、参考になる」とあります。素人考えですが「こんなつまらないものしかありません」と謙遜して「はじる」意味が生じたのでしょうか。

なお、「羞悪」は「義」に通じます。「孟子」に「羞悪の心は、義の端(はじめ)なり」(悪をはじにくむ心は義の芽生え)とあります。人間に義を含む仁義礼智の芽生えがあるのは「ちょうど四本の手足と同じように、生まれながらにそなわっている」(岩波文庫)。性善説の核心で、美しい説です。ちなみに性善説の「善」も「美」と同じく「羊」を部首とします。

ところで、「羊」の字に関する記事で「羊は祥の略字」という原稿がありました。漢和辞典を複数あたりましたが、そんなことは書かれていません。ただ白川静さんの「字通」(平凡社)に「漢代の鏡銘や瓦塼(がせん)の類に、羊を祥の字に用いることが多いが、省文にすぎない」とあります。これを略字とみなせば記事は間違いとはいいかねますが、やはり一般的に使う「略字」とは違います。「羊は祥に通じ」と直りました。

いずれにせよ、「羊」は十二支にちなむ動物の中でも好ましいイメージという点で一、二を争う字といえましょう。字のように今年は良い年となることを望みます、と書かないうちに「義」とは何かを考えさせるテロがフランスで起こってしまいました。ああ、なぜ人間は羊のようにおとなしく生きられないのでしょう。

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