漢字クイズ(テーマ・夢と幻)結果

10月20~24日の回答割合は次の通り(★が正解)。
化人幻戯かじんげんぎ33%けにんげんぎ★58%ばけびとめくらまし9%
夢現まさゆめ4%ゆめあらわ6%ゆめうつつ★90%
夢中遊行むちゅうゆうこう★28%むちゅうゆうぎょう19%むちゅうゆぎょう53%
邯鄲かんせん10%かんたん★77%てんたん13%
華胥かしょ★49%かしょう30%かしょく21%

この週は「夢と幻」がテーマ。

当初、江戸川乱歩の生誕120年なので、その作品から取り上げようと思っていたのですが、改めて手に取ると、難読語が極めて少ないことに気づきました。そして実にするする読める。そういうところも今なお乱歩が読み継がれる一因でしょう。

この週で唯一問題にできたのは「化人幻戯」。この言葉、四字熟語としては見つからず、国語辞典では「化人」はあっても「幻戯」は見つかりません。漢和辞典には「手品」の意味とあります。そして、小説では最後の種明かしのシーンで語られます。50歳の明智小五郎が「僕は今『幻戯』というシナの言葉を思い出した」と、その名も「幻戯」の章で言うのです。ちなみにその後の終章のタイトルは「化人」。この運び方、うまいなあ。ぞくぞくします。

なお、乱歩が大阪毎日新聞社の社員だったことはご存じですか。小説家として一本立ちする直前の1923年7月から翌年11月まで、広告部に勤めていました。

その間に「新青年」に発表されたのが「二癈人」という「夢中遊行」をテーマにした短編です。癈の字は「廃」とは意味はよく似ている、というより同じ意味で用いられるので、作品タイトルも「二廃人」と表記されることが多いようですが、本当は別字ですので、旧字を直すつもりで「二廃人」と書き換えるのは感心しません。

「夢中遊行」が今回最も低い正解率になったのは、選択肢が引っかけ問題らしくなったためでしょう。これに対し、最も数字の高い「夢現」は「むげん」という選択肢を入れればもっと低くなったと思われますが、「むげん」の読みを掲げる辞書が一つとはいえ見つかったので断念しました。

さて、乱歩が「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」の言葉を座右の銘にしていたことから、乱歩の作品以外からも夢と幻の漢字を求めてみました。

これはたくさんあります。中国の故事から「華胥」「邯鄲」。中国には他に荘子の「胡蝶の夢」という有名な故事がありますね。芥川龍之介の小説で有名な「杜子春」も、中国の古典がもとになっています。中国にはことのほか夢や幻に関するお話が多いようです。

そもそも「夢」という字はどういう成り立ちなのでしょう。白川静さんによると、眉飾りをつけ呪術を行う巫女が操作する霊によって、夕(夜)の睡眠中にあらわれるのが夢とされていたようです。それが今は将来の希望の意味でも使うようになりました。円満字二郎さんの「漢字ときあかし辞典」(研究社)によると、これは「日本語独自の用法」といいます。「この意味は明治時代ごろから現れるようで、英語やフランス語では同じような使われ方をするので、ヨーロッパからの影響かとも考えられる」

しかし、たぶん乱歩はその用法が嫌いだったのではないでしょうか。「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」にうかがえるのは、「夢」は現実と地続きではなく、反世界という認識です。乱歩は徹底して現実離れした幻影の世界を築きました。それがはかない夢だったとしても、乱歩にとっては本来いるべき別の現実だったはずです。だから飽きもせず、同じようなイメージを別作品でも繰り返したのでしょう。

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