毎年秋に発表される文化庁の「国語に関する世論調査」で、半数以上の人が本来と違う言い方をすると答えていた表現を過去の結果から集めました。ただ、多くの人が使っているとはいっても、今のところほとんどの辞書は正式に採用しておらず、新聞も許容していません。参考までに辞書の中でも言葉の変化を敏感に取り入れるとされる三省堂国語辞典(三国)最新版などの対応も見てみました。(特に断りのない語釈は大辞林から引いています)


采配を振るう


「采配」とは元々は「武将が士卒の指揮に用いた具。白紙や朱塗り,箔(はく)置きなどをした犬の革などを細長い短冊状に切り,柄の先につけたもの」。2008年度調査の「チームや部署に指示を与え、指揮すること」を意味する表現は?という問いでは、「采配を振るう」を選んだ人が58.4%、本来の「采配を振る」は28.6%でした。三国は「采配を振る」の意味として「采配を振るう」も記しています。


口先三寸


「舌先三寸」は「口先だけの巧みな弁舌」。「口先」には「心のこもらないうわべだけの言葉や話しぶり」という意味がありますが、慣用句としては「舌先三寸」です(「舌三寸」とも)。2011年度調査の「本心でない上辺だけの巧みな言葉」を意味する表現は?という問いでは「口先三寸」が56.7%、本来の「舌先三寸」が23.3%となっています。三国でも「口先三寸」は見つかりません。


声をあらげる


「荒らげる」は「声や態度などを荒くする。荒々しくする」。2010年度調査の「大きな声を出すこと」を意味する表現は?という問いでは「声を荒(あ)らげる」が79.9%、「声を荒(あら)らげる」が11.4%という結果で、実に約8割が本来ではない「あらげる」を選びました。そのためか三国のほか「あらげる」を取り入れる辞書は比較的多いですが、「誤用」(大辞泉)と明記しているものや、「本来は『あららげる』で,『あらげる』は近年使われるようになった語形」(大辞林)と補足しているものもあります。


足元をすくう


「足をすくう」は「相手のすきをついて,卑劣なやり方で失敗させる」こと。2007年度調査の「卑劣なやり方で、失敗させられること」を意味する表現は?という問いでは「足下をすくわれる」が74.1%に対し「足をすくわれる」は16.7%と本来の言い方を選んだ人は1割台でした。三国は「足下をすくう」も採用しています。


怒り心頭に達する


「怒り心頭に発する」は「心底から激しく怒る」こと。2012年度調査の「激しく怒ること」を意味する表現は?という問いでは「怒り心頭に達する」が67.1%で、本来の「怒り心頭に発する」は23.6%にとどまりました。三国は「怒り心頭だ」を俗用として記した上で、「『怒り心頭に達する』はあやまり」としています。
(Photo by kyu3)

(関連)

最近の「読めますか?」


校閲グループのお薦め本
「毎日ことば」のアカウント 
「毎日ことば」トップページへ
最近の記事
 
Top