漢字クイズ(テーマ・怪異)結果

8月18~22日の回答割合は次の通り(★が正解)。
真景累ケ淵しんけいかさねがふち★65%しんけいるいがふち14%まかげるいがふち20%
以津真天いしんしんてん35%いつしんでん27%いつまで★38%
火車かしゃ★75%きゃしゃ6%ひぐるま19%
玉梓たまき8%たましい1%たまずさ★91%
刑部姫おさかべひめ★75%ぎょうぶひめ21%けいぶき4%

以津真天(「今昔画図続百鬼」より)
この週は「怪異」。どんなに科学が発達した世になっても妖怪・怪談の話は語られつづけています。いま小学生に人気なのは「妖怪ウォッチ」ですね。妖怪ものといえば、何度もアニメ化されている水木しげるさんの「ゲゲゲの鬼太郎」を外すことはできません。

今回正解率が最低だった「以津真天」は、「鬼太郎」にも登場しているようです。実は太平記に描かれ、江戸期の「今昔画図続百鬼」で名前と絵姿を与えられた由緒正しい(?)妖怪。「水木しげるの妖怪図鑑」(講談社)にも出てきます。その解説を引用しましょう。

「ぼくは戦争中、南方で食い物が一年ばかりないという体験をしたことがあるが、このときの食い物のほしさというものは実際に経験したものでなければ想像もつかないものだ。だから昔から、食べ物に困って飢え死にしかけている人をそのままにして見殺すと、その人が死んでから妖怪になるという。不気味な怪鳥と化して、自分を見殺しにしたものにつきまとうのだ。『以津真天』というこの奇妙な名前は、そうした『いつまで』もつきまとうという意味もあるようだが、誰も顧みることのない自分の死体を哀れんで『いつまでほうっておくのか』と、怒りをこめて訴え、『いつまで、いつまで』と哭(な)くことに由来するという」

妖怪研究家としては当然、太平記などに触れる選択肢もあったと思いますが、ここでさりげなく戦争での悲惨な経験を妖怪に結びつけるのは水木さんならではです。

その水木さんの「日本妖怪大全」に出てくる妖怪から題名を取ったのが宮部みゆきさんの「火車」(新潮文庫)。最近出た「水木しげる漫画大全集・木槌の誘い」(講談社)で宮部さんが解説を書いています。「生前に悪事をした亡者を地獄まで乗せてゆく、火が燃え盛っている車。私が書きたいと思っていた素材を、的の真ん中を射貫(いぬ)くように、ぴたりと言い当てている。――これこそが次の作品のタイトルだ」

刑部姫(「夭怪着到牒」より)
「水木しげるの妖怪図鑑」には「長壁」も出てきますが、漢字クイズとしては別表記の「刑部」にしました。姫路城の天守閣にあるのは「刑部神社」とされますが、市内には別の「長壁神社」もあります。また日本国語大辞典(小学館)によれば、「おさかべ」は姫ではなくキツネで「於佐賀部狐・刑部狐」という字が掲げられています。もしかしたら姫路城だから姫に化けるのでしょうか。そして泉鏡花の戯曲「天守物語」では「富姫」となっています。生首が出てくる割にはオスカー・ワイルド「サロメ」ほどおどろおどろしくなく、どこかユーモラスに妖怪たちが描かれています。

「真景累ケ淵」は三遊亭円朝による怪談として現在では知られますが、「日本架空伝承人名事典」(平凡社)によると、江戸時代初期から伝わる言い伝えがもとになっているとのこと。東京・目黒の祐天寺に名を残す祐天上人の霊験を示す説話で、殺されてたたるようになった累の霊を解脱させたそうです。それが江戸期に浄瑠璃などさまざまな作品になり、滝沢馬琴も「新累解脱物語」を書いています。

その馬琴の「南総里見八犬伝」を読んだことはなくても、NHK人形劇「新八犬伝」を子供の頃見ていた人は中年世代に多いでしょう。「我こそは玉梓がおんりょう――」というおどろおどろしい言い方はみんなまねしていました。坂本九さんのナレーション「因果はめぐる糸車」も忘れられません。玉梓が古代の風習に基づき手紙を表した言葉だったことは、最近知りました。子供のとき覚えた言葉に意外な意味を見いだすのも、辞書を引く楽しみの一つです。

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