職場に残っていた古い部内報(1971=昭和46=年)に、新聞校閲の日常を題材にした「いろは唄」を見つけました。「舞台裏で黙々と地味な仕事に専念する校閲部員の意地と誇りを五・七・五に託した」と記されていましたが、時代を感じつつも今でも全く同じだと共感できるものもあり、なかなか味わい深く感じました。部内報だけに専門用語も多く、一般には意味が取りにくいと思われるもののほか、今では私たち自身にも意味がはっきりわからないものもありますが、いろは唄ということで、全体をそのまま再録いたします。(注は原文にはありません)
(イ)一字一句 見落としならぬ 舞台裏
(ロ)六〇〇〇の 双肩にかかる ひとつの目【注=6000は当時いた社員数か】
(ハ)幅広い 知識がひかる よい紙面
(ニ)日本語で 日本人が泣く むずかしさ
(ホ)誇りある きれいな紙面に 命かけ
(ヘ)ベテランも つかいそこなう 異字同訓
(ト)投書から 血のつながった 紙面でき
(チ)地方版 おくになまりも ごあいきょう
(リ)リストにも 載らぬ名詞に 首ひねり
(ヌ)濡れ紙で ムシクイ削りを まず直し【注=「濡れ紙」は試し刷りのこと】
(ル)ルールにも ない誤りを 人なおし
(ワ)わかりよい 言葉で生きる ニュースの目
(カ)かた時も 忘れてならぬ 句読点
(ヨ)読み深く きれいな紙面に 読者ふえ
(タ)たよりがい 校閲あって 記事が生き
(レ)連日の 新紙面にも 健康第一
(ソ)創刊百年 それをささえた 赤エンピツ
(ツ)積もるカン さっと飛び出す 字句直し
(ネ)熱心な 日ごろの努力が 記事ささえ
(ナ)泣くも笑うも 時間の勝負 七十七士の目が光る【注=七十七は当時いた部員数か】
(ラ)欄外も 割りつけにも配る 注意の目
(ム)むずかしい 言葉なおして 紙面いき
(ウ)薄い刷り 苦心のあとの 顔インク
(ノ)残りゲラ 組み忘れかと 気をつかい
(オ)追いかけの トクダネ記事に 念を入れ
(ク)句読点 うちまちがえて 意味くるい
(ヤ)やさしいと 気をゆるしたところに 落とし穴
(マ)迷う表現に 仲間の知識で 紙面いき
(ケ)経験と 年期がつくる よい紙面
(フ)ファクシミリ 見落としできぬ 一発勝負
(コ)降版に 光る目動く手 走る足
(エ)エリートや タレントささえる このしごと
(テ)手厳しい 読者の指摘で 知識ふえ 
(ア)当て字横文字 何でもござれ 日ごろの腕の見せどころ
(サ)差違い やっと直して 時間おり
(キ)きめ細か ふだんの知識 ものを言い
(ユ)夢にまで 出てくる大刷り 読みきれず【注=「大刷り」は実際の紙面大の試し刷り】
(メ)目がさめて 夢でよかった 組違い
(ミ)見落としで ハッと飛びおき 夢の中
(シ)神経の 休む間もない 紙面刷新
(ヒ)筆者ごと 持つ癖特徴にも 気を配り
(モ)モニターの 化けやゲラ刷り 要注意
(セ)整理部で 見落とす穴を うまく埋め
(ス)スピードと たしかな読みで 初校はけ
(ン)運動面 テーブルと経過のあわぬ もどかしさ【注=「テーブル」は個人成績表のこと】

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