いきなりですが問題です。「代表的な朝鮮料理の一つで、どんぶりに御飯を入れその上にもやし・ぜんまい・錦糸玉子・挽き肉・大根のなますなどを載せたもの。匙でかき混ぜながら食べる」(朝鮮語大辞典)ものといったら、さて何でしょう?


正解はビビンバ――と書きかけて手が止まりました。ビビンバは韓国語で混ぜご飯という意味ですが、朝鮮語大辞典には「ピビンパ、ビビンパ」とあり「ビビンバ」でいいのか迷ったからです。毎日新聞もこれに関してはどう表記するかを決めていません。国語辞典はどうでしょうか。いくつか引いてみました。
辞書
見出し語
語釈に挙げられた表記
広辞苑(第6版)
ビビンバ
ピビムパプ
日本国語大辞典(第2版)
ビビンバ
 ―――
大辞泉(第2版)
ビビンバ
ピビンパ、ピビパプ
三省堂国語辞典(第7版)
ビビンバ
ビビンパ
明鏡国語辞典(第2版)
ビビンバ
ビビンバブ
集英社国語辞典(第3版)
ビビンバ
ピビンパップ
大辞林(第3版)
ビビンパ
ピビンパプ、ビビンバ
新明解国語辞典(第7版)
ビビンパ
 ―――
というように「ビビンバ」が優勢です。では、お店のメニューはどうなっているのか気になり、大阪市内の韓国料理店や居酒屋を見て歩きました。ビビンパ、ビビンバ、ピビンパ、ピビンバで、辞書の見出し語より複数のパターンがあることが分かります。毎日新聞のデータベースで過去の記事を検索してみても表記は揺れています。


それにしても、なぜこんなにばらつきがあるのでしょうか。発音すると「ピビ(ム)パ(プ)」とムとプではu音を出さずに口を閉じます。しかしこれでは日本語の表記としてあり得ません。最初のピと最後のパがそれぞれビとバになりがちなのは、想像の域を出ませんが、発音のしやすさも理由にあると思います。


昨年、毎日新聞の用語集を改訂する際にも職場内で議論がありました。用語集は外来語表記の基準として日本語の音韻の範囲で書くと定め、ウェブやアンチエイジングなど外国語の感じが強いものは、できるだけ原音に近く、しかも日本人に読みやすい表記を用いることにしています。ただ、一般社会の表記が固定したものはそれに従うわけですが、ビビンバは辞書の例を見ても分かるとおり、表記が固定しているとまでは言えないようです。そのため用語集の掲載を見送った経緯があります。しかし表記にばらつきがあるのは好ましくなく、今後検討を重ねる必要がありそうです。          
 【中村和希】

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