校閲記者として入社してから2年ほどたった頃でしたか、「雪交じりの雨」という表現を目にして戸惑った覚えがあります。それは「みぞれ」と呼ぶのではないか、と。雪と雨がまざって降っている状態が「みぞれ」ですから、例えば「雪交じりの雨の中」を「みぞれの降る中」と書いても、問題はなさそうに思えます。

では、なぜこんな書き方になったのか? 雪粒がそれなりに形をとどめている状態ならばともかく、見た目には雨とあまり変わらないような状態なのに「みぞれ」と書いてしまうことに違和感があったからではないでしょうか。その一方で、後者のような状態を指す語としては例えば「氷雨」もありそうですが、これでは叙情的に過ぎる印象を与えかねない。そんな葛藤の結果、「雪交じりの雨」という表現に落ち着いたのでは……以上、あくまでも私の推測ですが、少しはもっともらしく聞こえるでしょうか。もちろん、気象用語としての「みぞれ」は、雨と雪の割合には関係しません。

とはいえ、雨とも雪とも言えない中途半端さにすっきりしない思いを抱いていた人は昔から少なくなかったようで、例えば「枕草子」にいわく、「降るものは、雪。あられ。みぞれはにくけれど、白き雪のまじりて降る、をかし」。「雪交じりの雨」と書かれるような状態なら、おそらく清少納言も「にくし」と表現したことでしょう。

ところで、過去の紙面から用例を探していてちらほら目にしたのが、「みぞれ交じりの雨(雪)」という表現です。しかしこれは、気象庁の「雪に関する用語」を見ると、「使用を控える」としています。「みぞれ」は雪と雨がまざっているわけですから、みぞれと雨(雪)がまざる状態というのは論理的にあり得ません。NHK放送文化研究所による解説でも、同様の趣旨から「誤用」としています。例えば「みぞれ交じりの空模様」という表現であれば「みぞれが降ったりやんだりしている天候」を指すわけですから問題ありませんが、こうした例に引きずられて「みぞれまじりの雨」としてしまったものでしょうか。

いよいよ冬本番が迫ってきましたが、初雪を知らせるニュースは「みぞれ」という語が登場しやすいケースです(観測上は、みぞれも雪として扱われるため)。不適切な表現を見逃してしまわないよう、例年以上に注意して臨みたいと思います。
【百田知弘】

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