by Marine-Blue
自分のいたらなさに気づいて、通信制の大学で日本語学の講座をとった。すると、先人から伝わる日本語について、いろいろなことがわかった。たとえば外来語の「パン」。ポルトガル語だ。明治に英語圏から日本に入って一般化したのなら、なぜ「ブレッド」と呼ばないのか?という、かねての疑問は氷解した。「パン」は戦国時代にポルトガル人から伝わっていたのだ。

前置きが長くなったが、学んだはずでも時に情が入ると判断が狂う。今年2月、長崎のランタンフェスティバル開幕を紹介する記事で、名物の「龍(じゃ)踊り」が登場した。原稿をみるなりおかしく感じた。「龍踊」と書かれて、送りがなの「り」がない。これでは「リュウヨウ」? 出稿元に確認すると「地元の団体は、龍踊と表記している」という。しかし、同フェスティバルのホームページ(HP)では「龍踊り」だ。その旨を出稿元に伝えたが「地元からの苦情」を理由に、結局「龍踊」の形で新聞に掲載となった。

「地元の苦情」というのであれば、「龍踊り」と表記したランタンフェスティバルにも「苦情」は届いていないのか。試しにほかにも地元紙の長崎新聞と、長崎学の権威、越中哲也氏が代表者の長崎歴史文化協会のHPにあたってみて驚いた。長崎新聞は「龍踊り」で、長崎歴史文化協会は「龍踊」。どうして送りがあったりなかったりするのか。

日本語は、外国由来のものを表記する場合、輸入元の言葉を残す。推測だが、漢字だけの「龍踊」という表記は中国からの渡来という、その由来を残しているということになる。今では「龍踊」が歴史民俗学関係や、踊りを神社に奉納する集まり「踊町(おどりちょう)」をはじめ多くの市民の間で定着している。それゆえに「地元からの苦情」という発言になったのであろう。

それならば「龍踊り」と書いても苦情をいわれないのか。しかし心配無用。新聞の表記は国語が基本なので、あくまでも読みがわかりやすいようにするためのもの。「○○おどり」と読ませるのであれば、「龍踊り」とするのが一般的だ。実際の使用状況とは必ずしも一致しない。そして、これは長崎新聞が特別なのではなく、新聞が基本とする国語の表記法にのっとっており、毎日新聞も加盟する新聞協会の懇談会で採用した用語や表記、用法に沿っているのだ。

疑問が晴れて、心も晴れた。龍踊りは、晴天がよく似合う。いよいよ7日から龍踊りが登場する「長崎くんち」。晴れを望む。
【杉山恵一】
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