以前、校閲のフェイスブックに、カレーライスのご飯ではない方を「ルー」と書いた記事について投稿しました。



「ルー」は、もともとは小麦粉をバターで炒めたもののことで、スープなどに入れてとろみやこくを出します。固形のインスタントのものがカレーやシチューで市販されており、「ルー」といえば、そちらを思いうかべる人が多いようです。しかし、NHK放送文化研究所の調査でも取りあげられているように、ご飯でない液体の部分を「ルー」と呼ぶことに違和感を持たない人もいます。

「ルー」と「カレー」、同じ液体の部分を指すのであれば、先の記事ではなぜ言い換えなかったのでしょうか。「カレー」を日本国語大辞典で調べると、(1)茶色をした粉末の香辛料。(中略)カレー粉(2)カレー粉を用いた料理。特にカレーライスにかけるカレーソース(3)「カレーライス」または「ライスカレー」の略――の三つが挙げられています。

面白いことに、(1)材料名(2)料理名(3)料理の略称、とずれがあります。そのため、例えば「カレー多めにしてね」と頼まれたら、「カレー」の指すものが(2)の料理名か(3)の料理の略称かが曖昧で、ご飯も増やした方がいいかなと悩む人も多いでしょう。問題の記事は、黒さが特徴的なのは液体の部分だけであることをはっきりさせる必要があったので、記者は(2)の料理名と(3)の略称の混同を避けようと「ルー」と書いたのだと思います。だから「ルー」を「カレー」に書き換えにくかったのでしょう。

(2)の説明にある「カレーソース」は、私にはなじみのない言い方でした。また、カレーライスにウスター「ソース」をかける人もいて、「ソース」に「ソース」をかける?とひっかかりました。一方、Googleで「カレーソース」を完全一致で検索してみると125万件のヒットがあります。外食産業などでは一般的な言葉なのでしょう。ホワイトソース、ミートソースなども「ソース」です。ジーニアス英和辞典によると「sauce」とは「食物にかける液状のもの」。カレーだって「ソース」であってもおかしくはありません。余談ですが、ちょっと高級なレストランなどでカレーを入れる銀色の食器がありますが、これはグレイビーボートというそうです。ソースなどを入れるために使うもので、なるほど、カレーもソースなのだなと感心しました。これからは、カレーライスのご飯でない方を多くしたいときは、「カレーソース大盛りにしてね」と言おうと思います。
【渡辺みなみ】

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