漢字クイズ(テーマ・日記)結果

8月5~9日の回答割合は次の通り(★が正解)。

「楮山」ヒロ子かじやま★38%こうじやま28%はしやま35%
閑間重松かんましげまつ36%しずましげまつ★49%ひるましげまつ15%
断腸亭日乗だんちょうていじつじょう23%だんちょうていにちじょう★74%だんちょうていひのり3%
仰臥漫録おうぎまんろく7%ぎょうがまんろく★86%ぎょうしんまんろく7%
御堂関白記おんどうかんぱくき1%ぎょどうかんぱくき4%みどうかんぱくき★96%

この週は、夏休みといえば「日記」ということで日記にまつわる固有名詞がテーマでした。

最も正解率が高かった「御堂関白記」からコメントしましょう。世界記憶遺産に登録されて日も浅いことで正解者が多かったのかもしれませんが、「御堂」という言葉は「御堂筋」など固有名詞ではよく使われますので、そちらの方が主な要因かもしれません。ちなみに「世界記憶遺産」は「世界記録遺産」と間違えられたことがありますので要注意です。

正岡子規の「仰臥漫録」で面白いのは、自分の世話をする妹律への言及です。「律は強情なり 人間に向って冷淡なり 特に男に向ってshyなり 彼は到底配偶者として世に立つ能(あた)わざるなり」「余は時として彼を殺さんと思ふほどに腹立つことあり」とさんざん非難しつつ、自分が死んだ後の律のことを心配しています。ところで律についての悪口で「言語同断」という文字があったのですが(岩波文庫版第17刷)、「言語道断」の間違いですね。現在発行のものは直っています。

「断腸亭日乗」の74%は思ったより低いと思いました。解説で断腸花が秋海棠(しゅうかいどう)の別名と記しましたが、それを知ったのは北村薫さんの「秋の花」(創元推理文庫)からです。女子高生の死の謎が解けたラストシーンで「人を思って泣く涙が落ち、そこから、生えたといいます」と語られます。何度読んでも泣ける名シーンだと思います。

「閑間重松」と「楮山ヒロ子」は8月6日の広島原爆にちなんだ人名です。

前者は井伏鱒二の「黒い雨」の主人公。題材が題材だけに重苦しい小説ですが、後半、日記の中でホオジロは何と言って鳴くかという愉快な雑談が出てきます。「一筆啓上ツカマツリ候と鳴くんだ」「私の郷里の頬白は、ベンケイ皿モテ来イ酢ヲ飲マショ、と鳴きます」「何だこら、もっと短く鳴け」「私が子供のときには、頬白は、チンチク二十八日、と鳴きました」「よし、それなら短てよろし」――敗戦直前でも、こういう会話がなされていたのですね。その場面のちょっと前に「ハラガヘッテハイクサガデキヌ」という落書きがあったと、やや反戦的なメッセージがありますが、それよりこういうちょっとした日常会話の記述に、教条主義に流れない井伏鱒二の真骨頂がうかがえます。

最も正解率の低い「楮山」という名前は、広島にいたときも目にした記憶がありません。楮をなぜ「かじ」と読むのか。思うに、楮(こうぞ)も梶(かじ)の木も和紙の原料になることから、混同されたのかもしれません。それはともかく、この人はふつうの女子高生で、作家でもないし、有名な小説のモデルでもありませんが、白血病により亡くなった彼女の日記が一つのきっかけになり、原爆ドームが保存されることになったということは、もっと知られるべきではないでしょうか。現在からみると、原爆ドームのない広島の姿は想像できません。しかし原爆ドームは1960年、取り壊されるという方針がありました。「取り壊せという市民の声が強く」「いつまでも不快な記憶を止めたくない」という考えが多かったようです(汐文社編集部「原爆ドーム物語」)。その流れを変えた一つが、原爆ドームに触れた彼女の日記でした。さて今、東日本大震災の遺構取り壊しのニュースが続きます。悲しい記憶を思い起こさせるという現在の痛みと、大震災があったことを端的に思い起こさせる場所がないという数十年先の未来と――その難しい選択をするうえで一つの材料を、原爆ドームの歴史は提供しているような気がします。

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