「風鈴の涼しげな音色が響いている」というような言い回しの原稿が出てくる季節になった。でも、どこか落ち着かない。「風鈴の涼しげな音が響く」「風鈴が涼しげな音色で鳴っている」ならわかるが、「音色(ねいろ)が響く」というのは奇妙な言い方だ。

過去の紙面を調べると「オルゴールの音色が響く」「胡弓(こきゅう)の哀愁漂う音色が響く」「太鼓の音色を響かせ……」などと、けっこう使われている。インターネットをのぞいてみると、やはり、それなりに出てくる。抵抗感はないのかもしれない。となると、奇妙だと感じるこちらのほうがおかしいのか。

「その音の特色となるような、感じ。おんしょく。▽ピアノとオルガンとでは、高さ・強さの等しい音を出しても、違った感じがする。これが音色の違い」(岩波国語辞典)。音の「色合い」であり「音の感じ、特性」だ。だから夏に「涼しげ」に、あるいは秋の頃には「さびしげ」に聞こえるのは、風鈴の持つ「音色」と、それに対する私たちの感じ方のせいなのだ。ただ、涼しげな音、さびしげな音といってもおかしくないのは、音という語全体には、その色合い、特性を表す意も包含されているからだろう。

では「響く」はどうか。影響する、世間に知れるなど比喩的に使われるときの意味をのぞき、直接に音に関わる意味を見ると「①大きな、また、高い音・声が広がり伝わる。とどろきわたる。鳴りわたる②音・声が物にぶつかり、はね返ってくる。また、震動が伝わっていく。反響する。こだまする。③音が長く尾を引く。余韻を生ずる」(日本国語大辞典)。「響く」のは、音そのもの(全体)であり、それに付随する、あるいは包含される「音の色合い」だけを抜き出して主語述語の関係で結ぶのは少々無理があるように思う。辞典での「音色、響く」の引用例を見ると「鐘の音が響く、太鼓の音が響く、大砲の音が響く」「笛の澄んだ音色、さえた音色、……の音色がある」などで「音色が響く」の例はなかなか見つからない。

「音色が響く」という表現、なにがなんでも誤用である、とは言わない。だが、音色は果たして「響く」ものなのかという疑問は、どうしてもぬぐえない。
【軽部能彦】

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