三村政司撮影
爆弾低気圧に竜巻、台風、ハリケーン……すっかり季節外れとはなりましたが、今年は気象災害のニュースが多かったと思います。大きな災害の場合、新聞には必ず被害の程度や範囲を伝える記事が出ます。そこでよく目にするのが「棟」「戸」「世帯」などの助数詞。「○○棟が全壊」「△△戸で停電」「××世帯が自主避難」などの情報から、私たちは被害の大きさを想像します。

毎日新聞用語集では、建物を数える基本の助数詞は「棟」としています。「棟」は本来「屋根の最も高い水平部分」(広辞苑)を意味します。戸建て住宅も集合住宅も、あるいは工場なども基本的に屋根は一つですから、さまざまな建物を数えることができる汎用(はんよう)性がある、という次第なのでしょう。

「世帯」は辞書には「住居および生計を共にする者の集団を数える語」(「数え方の辞典」)とありますが、要するに家族や家庭のイメージです。「☆☆世帯が自主避難」とあれば、それだけの家庭に被害が及んでいるとすぐに想像できます。

厄介なのが「戸」です。同辞典には「建設・売買の対象となる住宅数を数える語」とあり、毎日新聞では「住居の単位」としています。では、マンションのような集合住宅の場合、その全体を「1戸」とすべきでしょうか、それとも各部屋(世帯)を「1戸」と数えるのでしょうか。「建設の対象」ということなら前者だし、「『戸』別訪問」という言葉があるくらいだから後者のような気もします。そもそも集合住宅には向かない言葉なのかもしれません。それでもこの「戸」は実際の紙面でよく使われるのです。

取材記者時代の2010年7月、広島県庄原市を襲ったゲリラ豪雨を取材した経験があります。同市は広島県の北部にあり、のどかな田園地帯が広がり、ほとんどが昔からの戸建て住宅です。こうした場所で「□□戸が倒壊」とあれば数字と実態がよく符合しますが、例えばマンションが林立する大都会を台風などが襲った場合、「戸」の意味の捉え方によっては、数字と実態の差があまりに大きくなってしまう可能性があります。

被害の状況を正確に伝えるのが新聞社の役割ですが、こうした災害の場合、行政や警察などの発表に頼る場合がほとんどで、助数詞を勝手に変えることもできません。しかし、校閲者としてはせめて、助数詞に対するセンスを磨いておきたいものです。

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