長かった残暑も収まり、日に日に秋の気配が濃くなってきました。秋の夜長ともいうように、季節によって変化する夜の長さは時に校閲記者を悩ませます。

5月、高速道路で起きたある交通事故で警察による実況見分が行われました。それを伝える原稿は「○日未明」に行われたと書かれていて、「事故現場に立ち会い、引き揚げる容疑者」という説明のついた写真の撮影時刻は「午前5時11分」とありました。

この「未明」という言葉、具体的にどの時刻を表すのかは曖昧です。新明解第6版は「夜が明けきらない時分」と説明しています。毎日新聞では便宜的に「午前0時から夜明けまで」としていますが、特にルールとして明文化しているわけではありません。気象庁のホームページによると、天気予報などのための用語では未明を「午前0時ごろから午前3時ごろ」としていて、日の出前後の「午前3時ごろから午前6時ごろ」は「明け方」という別の言葉で表しています。

同じく真夜中を表す言葉に「深夜」があります。こちらは日付をまたぐ午前0時前後を指し、特に未明という場合は日付が変わった午前0時以降を示します。個人的には未明というと夜明けが近くはあっても、あたりはまだ真っ暗な時刻を想像します。辞書にあるように「夜が明けきらない」というのは、夜明けが迫ってだんだんと明るくなってきた日の出前の状態を含むのでしょうか。この解釈は分かれています。

くだんの原稿に戻りますが、5月の日の出時刻は午前4時半前後なので、写真が撮影された5時11分には夜はすっかり明けています。写真説明には「引き揚げる」とあるので、実況見分はおそらくそれより前から行われていたのでしょう。しかし、「未明」という原稿に「午前5時11分」の明るくなった写真がついているのにはどうにも違和感があり、悩んだ末、担当者と相談して「朝」と直しました。悩ましい夜に一筋の朝日が差し込んだようでした。
【渡辺みなみ】

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