「『最近では茶ぶ台のある家庭も減り……』。いかにもそれらしい漢字(感じ?)に、一瞬だまされそうになりヒヤッと」。大阪本社校閲グループの連絡ノートに私が書いた一文です。
あるコラムで、昭和の暮らしぶりを振り返るひとこまが出てきたのですが、「ちゃぶ台」(漢字で書くと「卓袱台」)が、なぜかおかしな表記に。卓袱とは食事、飯のこと。折り畳みのできる短い脚が付いた食卓のちゃぶ台は、確かにほとんど見掛けなくなりましたが、「お茶の間」にあるところから連想したものでしょうか。 

このように同音の響きとイメージが重なるためか、一般的な表記と違う漢字が当てられるケースが散見されます。以前、後輩がチェックした運動面の見出しが「口びるかみ」と誤って紙面化。もちろん正しくは「唇」。

「それくらい校閲サイドで気付かないとなあ」と本人に駄目出ししたところ、その数カ月後、なんと今度は私が記事中の「口ばしを挟む」を見逃す始末。本来は「嘴」「喙」ですが、常用漢字ではないため平仮名で「くちばし」とします。逆に後輩から冷ややかな視線を浴びて、情けない思いをしたのは言うまでもありません。


「悪どい」「真っしぐら」「花向け」…?


この他、あたかもその漢字がふさわしいと受け取られがちな代表例としては「あくどい手口」が「×悪どい」(どぎつさを意味する「灰汁(あく)」が語源という説や、「くどい」に関係するという説などが有力で「悪」の意はない)、「ゴールへまっしぐら(驀地)」が「×真っしぐら」(真っすぐに突き進む様子から?)、「はなむけ(餞、贐、鼻向け)の言葉」が「×花向け」(送別には花束が付き物とはいえ)――などが挙げられます。


最近のパソコンは変換機能が優れていて、ある言葉を入力する際に変な箇所で切ったり一字ずつ打ったりしない限り、ここで取り上げたような類いのミスはまず生じないはずで、それぞれの誤記例には何らかの経緯があったものと考えられます。ただ「その漢字で覚えていた」という思い込みが、やはり最大の原因でしょう。

先日も、ある見出しが「立たずむ」となってきたため「漢字では『佇む』で、表外字なので平仮名に直しますよ」と編集者に告げたところ、「ずっと『立』と書くものだとばかり思っていた」と苦笑い。普段何気なく使っている漢字でも、正確なものかどうか、いま一度辞書で確認する労を惜しまないことが、ミスを防止するうえで大切だと言えます。自戒を込めて……。
【宇治敏行】

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