漢字クイズ(テーマ・雨の歌から)結果


6月25~29日の回答割合は次の通り(★が正解)。


あまがさ 34% からかさ★ 47% さしがさ 19%
蛇の目 じゃのめ★ 99% だのめ 1% まむしのめ 0%
紅緒の木履 あかおのきっぷ 8% べにおのかっこ★ 47% べにおのもくり 46%
小雉子 きじばと 21% こきじ★ 48% ひばり 32%
遣らずの雨 いたらずのあめ 7% さらずのあめ 1% やらずのあめ★ 92%


この週は雨の歌から。

このテーマにした一つのきっかけは「日本語の深層」(木村紀子著、平凡社新書)の序文で「蛇の目」が何のことか分からない学生が多いというのを読んだことです。

photo by Kanze
そういえば、蛇の目傘を見ることは、現実世界はもちろん映像でもほとんどなくなりましたね。出題者(48歳)が小さい頃、祖母の家にはまだ蛇の目傘がありましたが、今では連続時代劇も民放テレビでは絶えてしまいましたし、若い人が知らないというのも無理はありません。

しかし、この漢字クイズに関してはほぼ全員が読めました。若くない人が多いのか、「蛇の目」を見たことがなくても知識としては常識なのかどうかは分かりません。ただ、「日本語の深層」の本によると「蛇の目」がどんな傘か分からない女子学生も「じゃのめでおむかいうれしいな」という「あめふり」の童謡は知っていたというから、死語にはなっていないということでしょう。

童謡つながりで「雨降りお月さん」の歌詞を調べたことで「傘」の問題が生まれました。「傘」だけで「からかさ」と読めるなんて、出題者も出題する直前まで知りませんでした。広辞苑で「からかさ【傘】」の見出し語を見たときは目を疑いました。実はこれこそ日本人と「かさ」のかかわりを示すことを、前述の「日本語の深層」は教えてくれます。

――戦前の童謡にもまだ使われていた「からカサ」という呼称は、頭にじかにかぶる方が、普通のカサで、柄(え)のついた開閉してさすのは「唐(から)かさ」と呼んでいた古代からの風習がまだあったのだと見られる。

つまり、日本人の庶民にとって「かさ」は頭にかぶる「笠」しかなかったので、柄のついた開閉する「かさ」は殊更に「唐」という字を使わなくても「傘」の字だけで舶来のカサ、すなわち「からかさ」を意味したのでしょう。ちなみに傘の字は柄のついたカサを示す象形文字。読みも「笠」と区別するため「傘=からかさ」で通っていたのでしょう。

なんと、童謡の中の「傘」の読み一つで日本人の民俗学的探求ができるとは。今回正解率が低かった「小雉子」も、キジは日本の国鳥とされるくらいだから昔は身近だったろうと、童謡の歌詞からもうかがえます。だから童謡は、いくら古臭い言葉が使われようといつまでも歌い継がれていってほしい。

しかし、「あめあめふれふれ」と同じ北原白秋作詞の「」は若い人数人に聞いても誰も知りませんでした。「紅緒の木履」の正解率の低さも、この童謡が歌われなくなったことを物語ります。暗いメロディーですし(蛇足ですが「霧越邸殺人事件」という推理小説では、その歌詞通りの道具立てで連続殺人が起こります)、今は家庭でも学校でも好まれないということでしょうか。

ただ、明るい暗いなんて子供にはあまり関係なく、歌ってくれる人がそばにいるかどうかが子供には大事なのだと思います。そして、子供の時には意味が分からなかった言葉が、ふとしたきっかけで大人になって分かる――その瞬間に歌ってくれた人のことを懐かしく思い出すことができれば、歌を教えた人も、教えられた人も幸せなのではないでしょうか。
最近の「読めますか?」


校閲グループのお薦め本
「毎日ことば」のアカウント 
「毎日ことば」トップページへ
最近の記事
 
Top