南アルプス市。山梨県中巨摩郡の6町村が合併して03年4月1日に誕生した。市名は一般公募で選ばれたという。カタカナが交じるのも珍しいが、日本アルプスの一つとしてなじみある表記とはいえ、はるか欧州、その中央部を東西にそびえる大山脈の名前を市名に掲げるのは、勇断といってよい。スイスあたりを旅して「南アルプス市から来ました」と答えたら、現地の人はびっくりするだろう。


 市名自体には驚いたが、新聞紙面(毎日新聞山梨県版)で南ア市という略称を目にしたときは、やはりそうなるかと思いながらも少し居心地の悪さを覚えた。地元新聞のインターネット上の記事をのぞくとやはり「南ア市」が出てきた。同県内ではすでに受け入れられた表記なのだろうか。

 新聞で、国内の市町村名を略記することはあまりない。京浜、阪神など複数の地名、あるいは大学などの組織名等とつながったりするときは略されることがあるが、単独で見るのはまれである。

 略称を使う理由に、文字数が多いことがある。南アルプス市は6文字。少々字数を食うが、他には、いちき串木野市(鹿児島県)、かすみがうら市(茨城県)、つくばみらい市(同)と、7字の自治体名もある。これらの市名の略記は、紙面で見たことがない(市を省くことはある)。「南ア」という表記が、すでに多くの人の目に触れてきた事情によるのだろう。国名の南アフリカ共和国も、山岳名の南アルプスも、見出しなどでは「南ア」と書かれて久しい。「南ア」だけでは、まだ新しい市の略称としてはぴんとこないが「南ア市」なら他と紛れることはない、ということか。

 長野県にも中央アルプス市の名で新市が生まれそうになったが、こちらは合併に至らなかった。もし誕生していたら、中ア市、中央ア市の略称を見ることになったのだろうか。【軽部能彦】
(Photo by E-190)
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