来年のNHK大河ドラマ「平清盛」に松田聖子さんが出演しますが、その役名を伝える原稿で「祗園女御」「祇園女御」と分かれていました。どちらが正しいか、お分かりですか。機械の表示によっては「しめすへん」が「示」と「ネ」で分かれるものもありますが、それはここでは問題にしません。

正解は「祇園女御」。「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)」をはじめ、一般的に祇園の祇の字のつくり「氏」は、下に「一」が付きません。国語辞典にも「祇園」とあります。「一」が付く「祗」は「祇」とは別の字で「し」と読みます。NHKのホームページでも「祇園」となっていたので単純なミスと分かり「祇」に直しました。

しかしなぜこんな字が出るの? パソコンで「ぎおん」と打てば「祇園」と正しく変換してくれるはず。と思って自分のパソコンで変換してみたら、選択肢に「祇園」「祗園」の二つとも出るではありませんか。なぜ誤字のはずの「祗園」が存在するのでしょう。



どうやらその鍵は川崎市の地名にあるようです。信頼できる資料では、中原区木月祗園町(きづきぎおんちょう)には「一」があります。この地名を呼び出すために「祗園」が変換候補になっていると思われるのです。


実際にその地を訪れてみました。上の写真の通り住所表示も「祗」になっています。ところが、すぐ近くにある別の表示板には、下の写真のようにはっきり「祇」の字が……。


「木月祇園町」の表示板を見つけたのはこれ一つ。この地名に関しては誤表示に違いありません。しかし、京都をはじめ全国に散在する「ぎおん」の地名のうち「一」があるのは、確認できた限り「木月祗園町」だけ。「本来は『祇』の方が正しい字だから、『祗』の一本を取ってやったぞ」と、下の写真の表示板が主張しているようにも感じました。
【岩佐義樹】

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