珍しい漢字や読みの地名に出くわすことがある。記事の要「5W1H」の一要素なので、地図や辞典で再確認することもしばしばだ。たとえば9月の台風12号で大規模な土砂ダムができた和歌山県田辺市熊野(いや)。被災地域には世界遺産の熊野古道(くまのこどう)などがあり、珍しい読み方にはルビが振られた。

 私の初任地・青森県は、東京出身者には耳慣れない地名の宝庫だった。それらを覚えるのに役立ったのが、地域の歴史や特色あふれる地名由来譚(たん)。中でも印象的だった二つを紹介したい。


 十和田湖の東に位置する、新郷村戸来。ここには「イエス・キリストは、ひそかに日本に渡り天寿を全うした」という驚きの伝説がある。難読地名の「戸来(へらい)」はヘブライに由来するとか。のどかな村をゆく国道454号には、「キリストの墓」を示す道路標識がある。道路脇の小山の上には十字架が立てられた盛り土が二つ。うち一つは、「キリストの身代わりにはりつけになった弟・イスキリ」の墓だという。真偽はともかく歴史ロマンが味わえる場所だ。

 本州最北端の地が、落人伝説の舞台にふさわしいのだろうか。津軽半島の北端には、岩手県の平泉で自刃したとされる平安時代の武将・源義経にまつわる難読地名「三厩」がある。伝説によると、源義経はひそかに北に逃れた。その道中で津軽海峡に行く手を阻まれた源義経一行は、観音様に三日三晩祈りをささげた。祈りが通じて3頭の竜馬を与えられ、一行は北海道へ逃れることができたという。3頭の竜馬がつながれていた地は三厩(みんまや)と呼ばれるようになり、今も当地の義経寺(ぎけいじ)には観音様が祭られている。

 地名には由来譚のあるものが多い。日々の校閲作業も、由来に思いをはせれば楽しくできそうだ。【三股智子】
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